51.
リリアナに関する記憶を全部消す? 繋がりを断つって、そう言うことなの?
「……聡いお主ならば分かっているだろう。だからこそ、首を縦に振らなかったのではないか?」
「あなた方がリリアナを隠していたのもそれが理由ですか」
「…ユラエスよ。あの子は扱いが難しいのじゃ」
校長先生はここでのことを口外しないように言い、話始める。
「ハゼルトは呪われておる。子を真に愛することができず、周りを壊してしまう。だからこそ、ハゼルトは血を外に出さなかった。外に出た血を持つ者が、国を亡ぼすことを恐れたのじゃよ」
「ハゼルトでは、当主の子が次代になるケースは他と比べて少ない。ほとんどは当主の弟妹が子を産み、その子どもを当主の子として後継に据える」
当主の弟妹の子どもが時期当主。なら、次の当主になるのは、
「俺はアメリアが婚約するとき、第二子をハゼルトに渡すことで了承したんだよ」
リリアナはハゼルトの当主になるために産まれた子。だから先生たちはリリアナを可愛がってるし、おそらくリリアナが幼い頃に先生たちと会ってるのもそれが理由。
「なら、リリアナちゃんは本来は」
「ハゼルトの第一子として取り扱われ、俺の養子になってた」
けれど、何かしらの理由でリリアナはハゼルトには行かず、殿下と婚約している。もし、殿下との婚約が理由だとすれば、それを行ったのは陛下。もっと言えば、おそらくそれを取りまとめたのは政治に関して任されているニーチェル公爵だ。
「なんで親父はあんたらがしたいことを妨害したんだ」
「そっちの方が楽だからだろうな」
「考えてもみなよ。シティアルに産まれた第二子は女でどちらも継がない白。オマケにその気質はハゼルトだ。一度婚約させて問題沙汰にしてから魔塔に送り、姪っ子殿に関するモノを全部消して魔塔から連れてきたと言い養子にする。それからゼクトと婚約させた方がよっぽど速いし効率もいい」
手間はかかるけれど、実際にそうしたからリリアナと殿下の婚約はこうなっている。ニーチェル公爵の誤算は、リリアナが思った以上に問題沙汰を起こさなかったこと。
「じゃあ、ゼクトくんは」
「元々はリリーのオモチャとして連れて来られたんだよ。気に入られたから婚約者候補に上がったけどな」
「ずいぶん心のないことをするな。ゼクトが死んでもよかったのか?」
「また探すのは面倒だったろうけど、別に一人や二人くらい誤差だろ?」
今までは多少の価値観の違いだと思っていた。ゲームではハゼルトはほとんど触れられていない。その理由はこれか。
圧倒的な価値観のズレ。人の命など、この人たちは心底どうでもいいんだ。




