46.
地獄のテスト五日目。今日は実技しかないこともあって気が重い。
魔法実技は先生ではなく他の先生が見るらしい。というのも、先生は三年生見に行くから、私たちは普段は魔法学担当の先生。
「伯父様じゃないと面倒なのですよねぇ」
「先生だと厳しくない?」
「詠唱が……」
リリアナ普段から無詠唱だもんね。かなりの高等技術だけど、今回のテストは詠唱込みのものだし、何よりリリアナは普段の授業で分かったけれど魔法陣もほとんど使わない。魔法発動に魔法陣を使わない魔術師レベルのことを行っている。そのため、今回のテストは嫌なのだろう。普段しないことをやるのはかなり難しい。
「覚えてはいるんですよね」
「覚えてるんですが、非効率的で省略しそうになるんですよねぇ」
リリアナの悪いクセってことか。大変そうだな。
「まぁ、頑張れ。リリアナからでしょ?」
「いっそのこと無詠唱でゼロ点も…」
「公爵泣くよ」
公爵泣くし、みんなが怖がるよ。リリアナが赤点とか考えられないから。
「大丈夫です。興味ないはずなので」
「あれがないワケないでしょ。いい加減家族で話しなよ」
「時間がないです」
リリアナの場合は時間を作らないが正しいのでは。公爵たちと一回ちゃんと話して。
時間になったから移動してテストを開始。
今回やるのは全員共通で【水属性】の魔法。魔法属性によっては得意不得意がありそうだけれど、仕方がない。ゲームではランダムで毎回違っていたし、完全に運である。
「これ、【水属性】ならなんでもいいの?」
「そうみたいですね。これならなんとかなりそうです」
なんとかなるって、リリアナさん? 初手から難易度高い魔法とかやめてね。ハードル高くなるから。
「蒼き黑き深淵に 我らが神の眼を見たり 我ら母なる海の者 その龍脈より出でし神の気 我が声聞こえるならば顕現せよ 【水龍】」
魔法陣から大量の水が溢れ、その水が龍の姿を象る。この国じゃ聞かない詠唱の文体。他国……たぶん別大陸のだ。この国のモノは詠唱が長め。この短さだと魔術師をよく出している……なんて国だったかな。
「こんな魔法は存在しない!」
いやあるでしょ。ないワケない。ちゃんと考えて? ないものやったら処罰受けるんだからね? そんなことリリアナがするワケないし、あんた魔法学の教師だよね。頭大丈夫?
「【水属性】ならばいいと言われたので別大陸のモノを行っただけですが?」
「公爵令嬢だからと図に乗るな! 私は魔法を全て暗記している。こんな魔法など存在しない!」
リリアナが自分の知らない魔法を使ったことが気に障ったのか、教師のクセに手を上げた。軽い音が響き、リリアナの頬は赤い花を咲かせ、教師はザマァ見ろとばかりに気持ちの悪い笑みを浮かべている。
「調子に乗るからだ化け物が!!」
「……今の言葉、訂正しなければ後悔しますよ」
「あの化け物侯爵は今はいない。貴様を守るものなどない!」
またリリアナに手を上げようとする教師を止めようとするけれど、先に誰かが止めた。
「何してるのかなぁ。お前は」
ここにはいるはずのない、冷たい目を向けるメルトさん。




