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40.




魔道具から聞こえる声の主。リリアナに聞くと短く「第三様です」と答える。


「第三魔術師?」

「はい」

「この方が?」

「はい」


嫌そうにしているのを見るに、人格者ではないんだろうね。リリアナが嫌がるって相当だと思うんだけど。


『あらぁ、失礼なこと考えてるのかしら』

「せめてその口調をやめてください。気持ち悪くて吐きそうです」

『酷いわね!』

「切りますよ?」


嫌いなのかなってくらい切りたがるじゃん。

相手の第三魔術師はやめてやめてと必死に言い、話があるなら答えるからとなんとかリリアナを説得した。


『んでぇ、何がお悩み?』

「友人が不思議な夢を見るのですよ」

『……友人? 子猫ちゃんが?』


きょとんという音が聞こえそうな声。その次には笑い声が響いてきた。「子猫ちゃんに友人!?」だの「ジョークだとしても笑える!」だの言ってるし、なんなら笑い転げて身体をどこかにぶつけたのか、かなり大きな鈍い音も聞こえてきた。


『ひぃ~。笑った笑った。はぁ~……。冗談言えるようになったんだねぇ』

「一回死んでいただいても? オカマ魔術師サマ」

『ひどぉい。私は女だよぉ?』

「男性の方に付いてるものがある方を私は女性とは言いません」


…………えっと、その人、男なの? 口調女の人のだけど、まさかのオカマ?


『それで、なんだったかしら』

「夢についてです」

『あー、そうだった』


それはきっと「天啓」じゃないかなと言われる。その人曰く、ハゼルトの神の加護を持つ私がハゼルトの魔力の濃い場所に行ったことで結びつきが強くなり、そのような夢を見るようになったのではないかということだ。


『詳しいことは第十魔術師に聞きなさいな』

「元よりそのつもりなのでもう切りますね」

『え、ちょ、速くない!?』


……言い切る前に切っちゃったけど、怒られないのかなこれ。リリアナだし、大丈夫っていう謎の信頼はあるけど、どうなんだろう。


「仲悪いんですか?」

「おばあ様に第三様は変人だから仲良くするなって言われてます」

「ハゼルトも大概だよ」

「あの方ハゼルトと似たような家系出身ですよ」


なら普通に見ても変人か。ハゼルトの言う変人はたまにまともな人の可能性もあると先生で知ったから怖かったけど、そういうことなら変人なのだろう。きっとそうだ。そういうことにしておこう。


「……なんでお前らこんなとこで飯食ってんの?」

「こちらとしては何故ハゼルト侯爵がここに来たのかの方が不思議ですが」


学食で一部生徒が使っていい個室という高位貴族の特権。あるあるだけどこういう話するときには便利だよね。というか、教師が入ってくるの禁止だからここにしたんですが。


「第三がうるせぇんだけどなんかしたか?」

「どうせまた部下に叱られたのでは?」


笑顔で嘘をつかない。先生もそれだなって顔しないでください。あの人どんだけ信頼度ないの。






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