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39.




最近、どこか不思議な夢を見る。

綺麗な星空が見える花畑にいて、その花畑は空に浮かんでいて、空島と言われれば納得できる。ファンタジー世界だからこんなのもありなのか、それとも夢だからなのかは分からないけれど、とても綺麗な場所。


花畑の中央には巨大な樹木が立っていて、時折漆黒の髪の青年と白髪の少女の影が見える。近づくことはできなくて、二人の声も聞こえない。


「これ、明晰夢ってやつだよね」


夢を夢と理解できる。不思議だけど、なんでこんなことになったんだ?

この夢を見始めたのはハゼルト邸に行ってから。そして、あの二人は定かではないけれど、おそらく借りた本に出てきた人たちだ。


本の内容は、大昔に生きていた神様の女の子の話。その子は光を当たると違う色に見えるという珍しい髪色を持っていた。そんな女の子が、いろんな人と関わりをもっていく。途中で一人の青年が出てきて、女の子と仲良くなっていく。私が読んだのはここまで。


夢も私が読むと次に進むという変わったもので、正直困る。神話って明るいものないし、夢でそんなの見たくない。ので、


「助けてください」

「無理ですね」


リリアナに助けを求めたらキッパリ断られた。あなたが渡してきた本のせいでこうなってるんですがそれについてはどう思ってるんでしょうか。


「本の内容を夢で見るなんてもの聞いたことありませんよ」

「私も初めてだよぉ」

「きっかけが分かればいいんじゃないの?」


きっかけと言われても、見始めたのは本を読んでからだからそれなんだろうけど、リリアナは見てないんでしょ? 先生も見てないらしいし。


「リリアナはそこら辺の専門家でしょ?」

「夢は範囲外です。魔法でもないですし、夢の専門家なんて誰も………」


なんでそこで止めたの。知り合いに夢の専門家でもいるとかないよ。


「魔塔に一人、夢に関する魔術を扱う方がいます」

「その人なら分かるんですか?」

「あの人、今起きてますかねぇ」


あの、今真っ昼間なのよ。起きてないとおかしいの。魔塔ってことは魔術師だよね。そんなに生活習慣ヤバいのかその人は。


「……何それ」


リリアナがどっからか取り出した小型の何か。魔道具なのかな。というか、取り出すときに使った魔法の方が気になる。それなんて魔法。


「一応、魔塔から何かあったときの連絡用として渡されたんですが」

「反応なしと」

「見事に寝てますね。役立たず」


ボソッと言ったの聞こえたからね。魔術師を役立たずとか言えるのリリアナだけだから。


「普段人を真夜中に起こして使うクセにこういうときは使えないんですよね」

『だぁれが使えないってぇ? 子猫ちゃん』


魔道具から聞こえてきたのは中性的な声。リリアナはその声を聞くと、よりにもよってなんでこの人が、と言った様子だ。






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