31.
国のために死ねるか。急に聞かれても答えられない。人間誰しも自分が可愛い。国のためと言われて、死ねる人はそう多くないだろう。まぁ、昔のあっちの人たちなら違うんだろうけど、私は戦争してた時代を生きてたワケではないし、そんな教育はされてないため普通に嫌だ。
「悪いけど、異例を許すワケにはいかないんだよね。自分はこんなでも、神から地上の【理】を管理する者として魔塔上位の席を与えられてる」
破れば自分だけではなく、多くを巻き込む大事に成りかねないと淡々と言うメルトさん。
ゲームではどうやってこれを回避した? 何か回避方法はあるはずだ。でないと、ゲームのアイリスが殺されていないことに説明がつかない。
「伯父上、急にそんな話をしても」
「急も何も、それがこの世界のルールだよ」
「だからと言っても、物事には順序と言うものがあるのではないですか」
急にそんなことを言っても呑み込めるはずもないと言うユラエスたちと、私情でルールを犯せば大きな歪みとなると言うメルトさん。先生と公爵は静観を貫いていて、助けてはくれない。無言のにらみ合いが続き、空気がかなり悪くなっていく。
「……ルールだの順序だのと言っていますが、そんなもの無意味でしょう?」
それを破ったのは、リリアナだった。いつものふんわりとした笑みを向けてきて、
「そもそも、彼のお方を呼び出せばよろしいではないですか。我々がここで口論しようが平行線です」
そう言った。
彼のお方、と言うのはきっとリヴァイアサンだろう。彼を呼び、話を聞き、私の処遇を決めればいいのではないかと。そう提案しているのだ。もしそれで私がバグではなかったとしても、何故私がリヴァイアサンを使役できたのかと言う話になってしまう。
「それでもご不満なら、彼女に会えばよろしいではないですか」
「……アレは出したくない」
「では、彼のお方の判断だけにいたしますか?」
メルトさんはリリアナの提案に顔をしかめた。彼女が誰かは分からないけれど、メルトさんとは相性が悪いのだろう。
「連れていけば喜びますよ? あそこは何もなく退屈だと、メリアを使って抗議してきていましたし」
「……オモチャにしたいだけだろう」
「興味はありますが、私にそんな権限ありませんので」
少しの間考え、メルトさんはため息で吐くももうそれでいいよと折れた。リリアナがどうぞ、と言ってきたから出せばいいのかなとリヴァイアサンを出す。大きさが不安だったけれど、小さい状態。
「へぇ、本当にリヴァイアサンなのか」
「信じてなかったの?」
「半信半疑ではあった」
リヴァイアサンは何かするというワケでもなく、最初にリリアナ、ついで先生、メルトさん、公爵、ゼクトと順番に上を飛んでいて、私たちの方にも来てる。
「これ、何してるんだ?」
「我々の魔力を視ているようですね」
しばらくすれば終わったのか、私の頭の上に乗ってきた。図々しい守護獣だな。
《姫の一族はいまだに健在のようだな》




