28.
扉を開ける音でこちらに気づいた先生。リリアナを少し見るけど、起きそうにない。
「すまんな。朝方まで実験してたから眠いらしい」
「ちゃんと寝かせろよ」
「やるって言ったのは姪だ」
先生が肩を揺らして起こそうとしているけれど、起きる気配はなし。ため息をついてゼクトを呼べとユラエスに頼んで、すぐにゼクトが来たけど、
「……やだぞ」
「お前の主だろ」
「たまに不機嫌だから嫌なんだよ」
嫌だと言ったところでゼクトに拒否権なんてなく、リリアナを起こそうとするけど、なんで水差し持ってるの?
「リリアナは全然起きないから、無理やり起こすしかないんだよね」
起こすために水ぶっかけるのかぁ、と止めたところでだと思い見てるだけにする。けれど不思議なことに、ゼクトがかけようとした水はリリアナに当たる前に空中で蒸発してしまった。
「……水、やだって言いました」
「なら起きろ」
気だるげに身体を起こすリリアナ。まだ少し寝ぼけてるのか、私たちに気づいていないらしい。
「姪、他の奴ら来てるから、顔洗ってこい」
「うぅ……」
ゼクトに引っ張られて退室し、五分もすれば服も変えて戻ってくる。まだ少し眠そうだけど、大丈夫かな。
「リリーちゃん、何時に寝たの?」
「四時前とか、ですかね……?」
もっと遅くに来ればよかったね。ごめん。でもまさか研究してて寝不足とは思わなかったんだ。
「目が覚めたならやろうよ」
リリアナとしてもさっさと終わらせて横になりたいのか、移動し始める。庭でやるけど、広すぎない?
「質問、ここでやって怒られないの?」
「ハゼルトの私有地は全て魔法使用許可だから大丈夫だ。そうでもしないと、こいつら常に不正して魔法やるからな」
魔法使用許可。分かりやすく言うのならば魔法開発及び研究の許可。
誰でもどこでも魔法の開発、または研究ができるワケではなく、国ごとに定められた施設があり、そこで行わなければ仮に新しい魔法の開発をしたとしても重罪。最悪処刑される。
この国では皇宮と学院、国が造った魔法研究機関、そしてハゼルト侯爵家の私有地のみ。
ハゼルトが許可されてるのはお分かりの通り、彼らを法で制するのは難しいから。
ティアナがやってもいいのかと聞いたのは、召喚魔法の類いは魔法使用許可がないと違法だから。
「あれ、お父さん前やってなかった?」
「あれはシエルが作った魔法のテスト。国には魔法の申請してたから問題ない」
先生がやればいいのにわざわざ公爵に頼んだのは、自分じゃ欠点が分からないから、かな?
「賭けるか」
「酒」
「前も飲んだろ…」
何を賭けるのか分からないけど、賭けって言った瞬間公爵間髪入れずにお酒って言ったな。お酒好きなのか。イメージないな。どちらかと言えば、先生が飲んで絡んでそう……。
「【古代種】一票」
「何かやらかしてバグるに一票」
「おかしなの出しそうだよね」
一人しかちゃんとしてないし、リリアナが何使役するかで賭けてるのね。
「【古代種】って、それこそお伽噺じゃないの?」
「ちゃんといますよ」
いますよって、見たことある物言いだけど、知り合いに使役者でもいるの? 【古代種】って神獣種の中でも別格だけど……。




