21.
昨日あんなことを話され、私たちの見ていることの裏で必死に平和を守るために自分の手を汚している人がいると分からされてからというもの、授業が頭に入ってこない。
「大丈夫ですか?」
「あぁ、うん。なんとか」
リリアナはいたとしても、ここまでではないんだろうな。偏見だけど、ハゼルトってそういう耐性ありそうだし。代わりにいろんなこと大変そうだけども。
「次の授業ってなんだっけ」
「一年生と三年生の合同授業です」
「合同……?」
そういえば、もうか。
前にも話題に出た守護獣。それを召喚する授業が今日なのだ。
一年生全員がやるため、はじめて学年全体でやることでもある。ただ、一年生のみだと先生たちだけでは対処できないからと、三年生のAクラスとBクラスの人たちもいる。三年生が二人一組になって、一年生が五人一組になり、適当にくっついてやるというのが流れ。
「……あれ、お兄ちゃんとゼクトくんなの?」
もう見慣れたいつもの五人でいれば、アストロさんとゼクトが私たちのところに来た。ゲームではリリアナじゃなくて、別の人がいたからアストロさんとオリヴィエさんだったんだっけか。
「悪いかよ」
「いや、ユラエスくんと組むと思ってたから」
「あそこ見てみろよ」
ゼクトが後ろを指すからなんだろうと見てみれば、クラリッサさんと組んでた。あそこに入る勇気はないね。普通に無理だし。
「それに、お前ら問題児見るのにゼクトと俺が一番だろ」
「問題児って酷くない?」
「定期的に屋敷抜けて周り巻き込むバカは問題児で充分だろ」
ティアナは自分が迷惑かけてる自覚を持つところからか。ムードメーカーはトラブルメーカーにもよくなるし。
「周りもう始めてますけど」
「シエルが説明なんてするワケないだろ」
それはそうなんですけど、他の先生もいるじゃん。ここでもハゼルトを気にするのか。少しは勇気……無理だな。先生相手はさすがに無理だ。前に不機嫌にさせて魔法を顔スレスレに撃たれてた人いたし。あれ見たあとはさすがに勇気持てない。
「ハゼルトの独裁始まってない?」
「あれくらいじゃ独裁って言えないだろ」
恐怖で支配してる感じはするけど、ハゼルトは触らぬ神に祟りなしって感じだし。
「こっちも始めるぞ。リリアナ嬢はやらないんだよな?」
「やったら面倒が起こりますよ」
「明日は中止だな。サボるか」
「お兄ちゃんからサボりって言葉聞くとは思わなかったよ」
アストロさん、ゲームでも真面目そうだったし、ここのメンバーのまとめ役って感じだったけど、意外とフラッとと言いますか、なんと言うか。
「アストロ様はニーチェル公爵同様、適度に休むって感じですからね」
「どうせ明日は平日。休みになっても騎士団行かなくて問題はない」
さっきからなんで明日は学校がなくなると思ってるんだろうか。かなりのことがないと早々ないのに。
「明日が休みって言われてないよ?」
「なるんだよ。ほぼ確実に」
当たり前だろ、という顔のゼクトとアストロさん。何故分かるのかと聞けば、返ってきたのは予想の斜め上のことだった。
「神託で今年の新入生の中に【愛し子】がいることが確定してるんだよ」




