196.
少しの静寂と、戸惑い。敵は全員あの呪いになったはず。その呪いはハゼルトの呪いが全部食べた。敵はいないはずなのに、リリアナの肩を何かが貫いた。幸い腕は繋がっているけど、血がかなり流れてる。
「なんであんたがやられてるのよ!」
フレミア侯爵令嬢たちの声を無視して、リリアナは誰かを探すように目を移す。さっきの攻撃、魔法によるものじゃない。魔力を感じられない。だとしたら、
「やってくれましたね……」
すぐに動くだろう先生が動かない。いるはずのメルトさんも。どうなってる。これは何。誰の仕業……。
「メリア、カシアはこの場の指揮を執りなさい! ガンマは急いでユートたちに伝達!」
リリアナはそう言ってどこかに転移する。別の場所で何かあった? それとも、傷を治すため? どっちにしろ、会場は混乱に包まれた。呪いを打ち倒したはずのリリアナがいないはずの敵に攻撃された。もしかしたら次は自分が攻撃されるかもしれないと。
「悪いけど、飛ぶよ」
「メルトさん!?」
急に目の前に現れたと思えば、一緒に転移させられる。風が吹き荒れ、バランスを取ろうとすると誰かに支えられた。見てみるとサジュエルで、ゼクトたちもいる。なんなら、皇帝陛下たち大人も。
「おい、どうなって」
下を見てみるといつだかにも見た物質化した魔法陣。そして、そのさらに下。地上には、荒廃した大地と、無数の人がいた。
「……ここって」
「カブェリオ。被害最小にするならここがいいからね」
「被害って、なんの」
「姪っ子殿」
メルトさんの視線を追うと、私たちの乗っている魔法陣とはまた別の、小さな魔法陣に、肩を必死に押さえて倒れているリリアナがいた。
「……逃げ、て……」
リリアナから微かに発せられたその言葉を区切りに、リリアナの魔力が襲ってくる。冷たいのに熱い、矛盾した魔力。あのときの攻撃のせい? 魔力が感じられなかったからたぶん呪い。だとしたら、効果は暴走?
「呪い返しは!? リリアナちゃん使ってたでしょ!」
「相手も使ってたんだろ。呪い返しは同じものは一回しか跳ね返せない」
じゃあ、敵はリリアナが呪い返しを使っている前提でやった。でも、なんでこんなこと。
「止められないの」
「聖女が無理なら無理。自分もシエルも解呪はできない」
「リリアナ様の耐性が強すぎて効き目が……」
どうするの。このままだとリリアナが……。私たちも危険だし。
「方法ないの!?」
「あるっちゃあるぞ。一時的だが」
ニーチェル公爵が何かをしようとする。ニーチェル公爵に何か策がある? でも、方法があるなら先生たちが知らないはずない。それに、なんでこんな嫌な予感がするの……?
「待て公爵、やめろ!」
ゼクトが止めようとするけれど、公爵はその前に動いていて。どこからか現れた長剣が、リリアナの心臓部を貫いた。




