191.
「あっという間な一年だったね」
「僕だけハブられるんですけど」
「一年だけの留学なんだから仕方ないだろ……」
感動の卒業式……なんてムードはここにはなくてですね。普通に会えなくなるのが王太子殿下とクロフィムだけな上にその二人とはリリアナに頼めば会えるからお別れ感がない。ここ本当に身内多すぎるのよ。
「まぁ、実験とかで何度も会うと思うよ。誰でも使える転移魔法陣の開発途中だし」
「来年までには完成させたいですからね」
なんかすごいこと聞いた気がする。気のせいってことにしようかな。知らないフリしよう。それがきっと安全だし。
「ほら、そろそろ入場よ」
「お前ら先に行かないとだろ。早く行ってこい」
「やば、急げ急げ」
「転ぶから走るなって」
会場に行くと当然ながら人が多い。保護者がいるのは当たり前だけど、約二名確実に卒業生の保護者じゃない人がいるんだよな。
「……なんで皇帝陛下たちいるの?」
「伯父様に用があったらしいです」
そのついでで来たってことか。よく入れたな。普通禁止だよね。これが権力の押しきりかぁ……。
「リリィリリィ、これ始まるのいつ?」
「もうすぐですよ。……え?」
振り替えると何故かいるリオくん。……待て待て。なんでここいる? どうやって入った。まずいていいの?
「侯爵に入れてもらった」
「今すぐ帰りなさい」
「えー、なんでよ。いいじゃんか」
リリアナに抱きついて帰らないと子どものような駄々をこねるリオくん。先生、死人を連れてこないでください。
「え、大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。侯爵たちが認識阻害かけてくれたから、君たち以外には見えない」
「だからって抱きつかないでください。重たいです」
幽霊に重いも何もなさそうだけど、見た目は自分より大きい男の子だし、そう思うのかな。なんだっけ。プラシーボ効果? ……なんか違う気がする。
「そろそろ始まるけど」
「うるさくしないでくださいね」
式が始まると卒業生たちが入場してくる。美男美女ばかりで圧巻というか。
ゲームだと、このあと攻略対象とヒロインが前に出て式を中断。断罪に入ってたけど、私はそんなことするつもりもないし、大丈夫でしょ。攻略対象全員とリリアナとの仲も良好だし。
「……リリィ」
「こんなときまで動くとは、どんな教育受けてるのでしょうかね」
式の最中だと言うのに当たり前かのように動き出す二年生の令嬢。……うわ、あれまさか……。
「リリアナ・アデア・シティアル! 出てきなさい!!」
私と先輩と同じ転生者のミティウム・ナノン・フレミア侯爵令嬢。まさかだけど、味方なしにリリアナにいちゃもん付けるつもり? 胆が据わりすぎでしょ。
「……売られた喧嘩は買っていいですかね」
「え、行くの?」
「いい加減邪魔なので、来年からの快適な生活のためにも掃除してきます」
笑顔だけど、目が笑ってないよ。あれ相当キレてるよ。ゲームでも問題ではあったけど、普通に攻略対象味方ゼロでやったら終わりだよ。名前も知らない転生者さん。




