140.
気を取り直してやり始めるけど、うん。普通に難しい。
《魔力を普段より多く注ぎ込むイメージでやってみてください》
なんでこれが守護獣と一緒の授業なのかって思ってたけど、リリシア曰く、守護獣の魔力を借りた方が成功率が高いらしい。らしいけれど、
「アイリス、意地張らずに出せば?」
「嫌みしか言わない守護獣は守護獣じゃない」
絶対出さない。出したくない。出しても文句しか言わないもん。
「ゆっくりと、少しずつでいいので、魔力を魔法陣に多く流し込みましょうか」
無理強いはしないとリリシアが丁寧に教えてくれて、なんとか簡単なものは無詠唱でもできるけど、やっぱり難しいものは守護獣かぁ。出さずに魔力借りる……は、無理そうだな。
「アイリスとリヴァイアサンって、仲悪いよね」
「あいつうるさいんだよ……」
「守護獣が喋るのも大変だね」
本当に、なんで幻獣種が出てきたのか分からないよ。しかも、ゲームでは一切喋ってなかったしさ。乙女ゲームにそんな要素いらないと言われたらいらないだろうけどもさ。にしても裏でいろいろ起こりすぎ。シナリオを変えたが故の現象なのか、それとも元々裏で進んでいたものだったのかも分からないし。ゲームをプレイヤーとして操作するのと、自分の人生として生きていくのだと、当たり前だけれどやっぱり違うな。
《水の王はあまり友好的とは言えませんからね》
「私も殿下みたいに精霊がよかった……」
「精霊も、そんなに友好的な方いないんですけどね」
殿下が当たり引いてるだけったことか。ジンとかは友好的って言えるか怪しいラインだもんな。この世界だと水の精霊ってなんなんだろう。フェンリルとかいるのかも分からないし。
「精霊に関してはどこまで言っていいのかが分からないから教えられないんですよね」
「ハゼルトので?」
「種族間での契約だそうです」
そもそもで情報が隠されてるってことか。さすが精霊。適当な管理で秘密がポロポロ私たちに流れてきてるハゼルトとは違う。
「リリアナは今日黒い子なんだね」
「ヴァイスは屋敷でくつろいでますよ」
「守護獣に名前つけたんだ」
「愛着湧きますから」
ペットに名前つけるみたいな感覚なのかな。私のは……そもそもで愛嬌が皆無だからな。
「せめて可愛げがあればなぁ」
《可愛げがなくて悪かったな》
思ってもないクセに言うなだし、勝手に出てくるな。てか、いつも勝手に出てくるクセにこういうときだけ全然出てこないよね。
《小娘に付き合う道理はない》
「あんた本当に私の守護獣なんだよね?」
もっかいやり直しってできないのかな。こいつが私の守護獣って信じられないんだけど。ゲームのアイリスはよくこれに耐えられたな。てか、まずゲームだとこいつなんで喋らなかったんだよ。ゲーム進行上邪魔だったとしても、だったらこっちでも喋るなよって感じだよ。とことんゲームと同じでゲームと違うなこの世界。ゲームに酷似しまくってるまったく関係ない世界とかだったら笑っちゃうよ。




