14.
しばらく他愛もない話をしていれば目的の酒場に着いたようで、看板を見れば「黒猫の住処」と書かれていた。
中に入るとかなり賑わっていて、何人かがこちらを見ているけれど何かをしてくる様子はない。
「マスター、ここに【貪欲の知恵】ってあるか?」
「あいつに会いに来たのか」
あいつ? やっぱりお酒じゃないのか。となると、ゲームの定番だとサポートキャラとか? でも酒場に来るイベントもなかったからここにいるのか分からないな。
「そこの通路の奥にいるよ」
マスターさんが指したのは薄暗い通路。この奥にいるってことは、部屋があるのか?
「気をつけてね」
「結構暗いな」
「入られちゃ困るんだろ」
通路は階段状になっていて暗くて奥は見えない。
歩いているけど、これ帰るときが大変だな?
「……誰かいる」
「え、見えないけど」
なんで見えるの。そういう魔法あるのか、目がいいのか。
少し進めば終わりが見えてきて、階段の先の扉の前に鬼の面を被った男の人が立っていた。
「…はじめましてかな。ニーチェル公爵から話は聞いてる」
「公爵から?」
「【貪欲の知恵】はこの先にいるよ」
そう言い、扉を開け入っていく男の人に続き入ると、狐の面を被った少年がいて、
「お客さん?」
「なんでお前らはポーカーやってんの?」
「暇だからやろうってなった」
「…………いや、ちょっと待て」
その少年とテーブルの上でポーカーをしているらしいゼクト。なんでいるのか聞きたいし、なんか二人が座ってるの畳だしツッコミどころ満載なのですが。
「なんでいる」
「【貪欲の知恵】に用があったから」
「場所知ってたのか?」
「シエル経由で何度か来たことがある」
じゃあわざわざ三人が頼まれなくてもよかったのでは。
「リリアナは?」
「シエルのとこで実験」
「報連相」
「俺に言うな」
とりあえず、狐の面の人が【貪欲の知恵】さんでいいの?
「僕が【貪欲の知恵】ことリアンだよ、よろしく~」
「その【貪欲の知恵】ってのは二つ名的な?」
「僕は情報収集が得意でね。情報とは知識。それを常に集め続けるからそう呼ばれてるんだ」
なるほど。じゃあ、もう一つの【白藤の愛】っていうのも名前の由来があるのか。
「君たちが来たのはニーチェル公爵から言われたからだよね」
「一応な」
「ニーチェル公爵も人使い荒いよね~。リアたちには叶わないけどさ」
ニーチェル公爵とは仲が良いのかな。それに、リアって誰。
「リリーのことだよ」
「え、リリアナここ来たことあるの!?」
「僕らはハゼルトお抱えだからね」
またかハゼルト。そりゃあニーチェル公爵も来たことありますよね。ニーチェル公爵と先生が仲良いのは公式でも言われてたし。
「俺たちは【貪欲の知恵】を買ってこいって頼まれたんだが」
「あぁ、それは僕から必要な情報買ってこいってことだよ」
「【白藤の愛】ってのも人なのか?」
「うん。僕の姉」
……あなたのことを話すとき、十四のお酒って言ってたと記憶してるのですが。
「十四兄弟なんだよね~」
「大家族じゃん」
「ツッコミ入れるところが違うだろ」