133.
最初にダンスを踊って、あとは楽しくお喋りして、とやっていたら、いつの間にかパーティーは終盤。何事もなく終わりそう。
「姪っ子殿、ヴェルナード。ちょっといい?」
「どうした」
「はい?」
メルトさん、どこから湧いて出たんですか。魔法で姿消してるとは聞いてたけど、本当にどこいた。
「上から急ぎで。アレの国境近く」
「……カラリエ、しばらく戻らないのを伝えといてくれ。リリアナは人形使って捜索。見つけ次第報告してくれ」
「必要ないとは思いますが、これを持っていってください」
リリアナが何か薄紫色の液体が入った小瓶を公爵に渡す。公爵はため息をつき、使いたくはないなと言って懐にしまい、会場を去った。
「さっきの液体って、なんなの?」
「とある液体を混ぜ合わせた特注品です。使えば実験になりますし、使わなかったら使わなかったで返してもらえばいいですからね」
回復系のものなのか、それとも毒の類いなのか。どちらにせよ、危険なところに向かったのは確かだ。
「すぐに何もなかったように帰ってくるよ。この国で一番の魔法の使い手だからね。昔は自分たちとよく本気でやってたけど死んでないし」
基準がメルトさんたちなのは怖いけど、安心できてしまう。それだけ強いってことだし、信頼されてるってことだよね。
「この辺りには反応もありませんし、大丈夫そうですかね」
「一応そのまま警戒しておいて」
何も教えてもらえないから何も分からない……。巻き込みたくないって優しさがあるから、なのかな。そうと信じたい。
それ以外は特に問題もなく、無事にパーティーは終了。このあとどうするのかなと思って聞いてみたら、ハゼルトの屋敷に帰るらしい。さすがに迷惑だろうと思うけど、今日の夜には帰ると伝えてあったらしく、問題はないらしい。
「それに、君ら明日学院だろ?」
「……そうじゃん」
長期休暇じゃないもんね。普通にはしゃいでたけど、私たち明日学院か。もっと遊びたい……。
「あと今年って何あったっけか?」
「引き継ぎ」
「それ、あんたが来ないからできてないのよ」
「勝手にやっとけよ」
なんの引き継ぎなの。ゼクトなんかやってたっけ?
「生徒会でしょ。ゼクトくん会長だし」
「……確かに、やってたね」
「お兄様たちとじゃんけんして負けて会長なりましたもんね」
会長をそんな適当に決めないでよ。あとそこはユラエスかアストロさんがやろうよ。
「先輩も役員なんですか?」
「ユラエスの婚約者で侯爵家なのもあってやってるわ」
大変だな。私は関係ないからいいや。
「人数足りないからカトレア嬢もやると思うけど」
「人数が七だっけ」
「…やらないって選択肢は」
「俺がないからないだろ」
終わったかもしれない。生徒会とかこの世界でやりたくないよ。