132.
「あのねぇ」
「ごめんって…」
無事に終わったからいいけど、何回目なのよ。人をオモチャにしないの。
「満更でもないクセに言うわねぇ」
「それとこれとは別です」
普通に恥ずかしいからやめて。婚約者じゃないのに踊るのもあれだし。
「なんで俺まで……」
「お似合いだったよ?」
「蹴り飛ばすぞ」
シャルフさん、そんなに嫌だったのか。もっとちゃんと主張すればよかったのに。
「ユートたちの酒の肴になるのが一番嫌だ」
「暇なんだろ」
「仕事ないとき集まって飲んでるイメージ強いよねぇ」
「仕事ないことがほぼないからな。あいつらは」
人によって仕事量が違うのはしょうがないけど、にしてもじゃないか? メリアさんとか仕事してるイメージゼロなんですけど。
「私は警護が主だからね~。騎士団入ったのは手っ取り早く行動できるからだし、勝手しても多少許されるからね」
「勝手は……許されてるの?」
「月に一度出ればいいし、許されてはいるんじゃない?」
甘やかしか、先生たちが脅してのどっちかな気がするけど。あそこ、先生たち年上三人が強すぎるもんな。皇帝陛下たち苦労してそう。
「楽しんでそうだな」
「ヴェルおじ様。お久しぶりです」
「今日はあのうるさいのいないんだ」
「リリアナが連絡しても無視してご機嫌斜めだからな」
リリアナ、あのときのことまだ根に持ってるのね。意外と根に持つタイプなのか。恨み抱いたら全力でなんかされそうで怖い。
「道理でフォールトたちが来ると言っても来ないワケだ」
「再従妹殿、脅してないよね?」
「してません。失礼ですね」
やってそうだから怖いんだよ。裏で何しててもおかしくないんだから。
「それで、シエルとメルトは」
「伯父様は例のお方とバルコニーにでもいるんじゃないですか? 第四様は魔法で姿消してます」
「ここは密会場所じゃないんだがな」
フォルフィティア公爵もハゼルト関連で苦労してそうだな。主に子どもたちのことで。
「……それにしても、多すぎないか?」
多いって、たぶん護衛の人たちがだよね。正直、いざとなればアストロさんとユラエス、サジュエルも戦えるし、なんならリリアナも戦えるから過剰なんだよね。戦えないの、実質私ら一年組と先輩くらいだろうし。
「念には念を、ですよ。近頃また面倒なのが動いているみたいですから」
「……またか」
「落とすのに躍起なのでしょうね。無駄だというのに、わざわざ大規模にするから処理が面倒です」
リリアナが処理って言うの、本当に怖い。ハゼルトって結構いらないものなんでもかんでも処理とか言って捨てたりしそうだし。何が怖いって、それが人だった場合処理(殺す)になってそうなのよね。