128.
前日祭も終わり、花祭り当日。花が空を舞い、人々の賑わう声が聞こえてくる。
「昨日よりすごい」
「当日だからね。毎年こんなだよ」
「お祭りあるのいいよね」
この世界、学祭とかもないからお祭りとかの行事が本当にない。建国祭とかはあるけど、お祭りと言うより儀式みたいな感じだし、屋台とかもそんなに出ないからな。
「……で、第六魔術師は?」
「そろそろ起きてくるはずですよ」
そろそろって、もう十時すぎてるよ? 休日はのんびりしてるタイプなのか?
「……姪、頭痛薬くれ。頭痛ぇ」
「噂をすればなんとやら、ですね。魔力不足は頭痛薬で治りませんよ。魔力回復薬持ってくるので待っててください」
部屋に入ってきた先生は、いつもちゃんと服を着ているワケではないけれど、それ以上に着崩しているというか、目のやり場に困るというか……。
「シエルさん、朝から熱いのバレるよ」
「せめて前を閉じてから来いよ」
何がとは言わないけど、見えたよね。マンガとかだと付けたりするのは知ってるけど、本当に付けたりするんだ。しかも、結構目立ってたし……。
「シエルが叩いてきたぁ!」
「るっせぇ、バカ淫魔。魔力根こそぎ持っていきやがって。つか、服を着ろよ。服を」
先生、それブーメランだよ。ちゃんと服を着てから言ってください。アディッサさんも、女性なんだからこんな男の人たくさんいる場所にそんな服装で来ないでください。というか、それ先生のローブだよね?
「彼シャツ」
「シャツじゃねぇよ」
彼氏という部分を否定しない辺り先生もアディッサさん大好きだな? あと、朝っぱらからイチャイチャ見せつけないでください。
「いつもこうなの?」
「アディッサがいるときはこうだな」
「というか、しれっと淫魔って言ってなかったかしら?」
言ってましたね。この世界淫魔もいるんだ。いや、いはするだろうけど、ファンタジーだし。でもこんな普通に現れるとは思わないじゃん。もっとこう、隠密行動する種族じゃないの?
「持ってきましたよ。あと、アディッサ様は手加減をそろそろ覚えてください」
「えー、だってシエルが」
「クスリ盛ってきた奴が言い訳すんな」
淫魔が恋人にクスリを盛るって……。そこはファンタジーらしく魔法じゃないのか。いやこんなところでファンタジー要素出されてもだけどさ。多少はそりゃ夢見ますよ。ファンタジーもの好きの一人として。
「……先生が女の人を侍らせてるのって、なんか意外」
「お前ら、それ姪にも言えるからな」
リリアナは別にそんなことしてな……ゼクトと殿下は侍らせてる判定になるのか?
「その判定だと、恋人同士だったり夫婦だったりは全てそうなるぞ」
……確かに。