124.
ため息をつくアストロくんを余所目に準備し始めるゼクトくん。正直、ニーチェルの時期当主だとしても言っていいのか疑問だけど、ゼクトくんが言ったなら問題ないでしょ。
「あ、アイリスちゃんとサジュエルくん」
「やっぱりこうやって見てるの楽しいねぇ」
リリアナちゃんの魔道具を勝手に持ってきたらしく、それを起動してみんなの様子を見てる。言い訳としては、何かやらかしそうだから監視と、何かあったときにすぐ対応できるようにだとか。
「あの二人は婚約者ではないんだよな?」
「まだ婚約者じゃないな」
アイリスちゃんとサジュエルくん、お似合いだよねぇ。両思いみたいだし、早くくっつけばいいのに。
「あ、王太子と聖女別行動してるじゃん」
「フォールトは祭りのときロアといるだろ」
ロアちゃん、何者なんだろ。どこか人間とは違う雰囲気だけれど、ハゼルトほどではない。
「アストロくんはそこら辺の感知できないもんね」
「俺は制圧向きなんだよ」
ハゼルト対策としてはそれでいいけど、人によってはかなり厄介なのいるから感知も育てようよ。苦手伸ばそ?
「オリヴィエが言うな」
「勉強しろ」
「やる気出せばいけるいける」
散々な言われよう……。実際勉強嫌だからって逃げてるのは私なんだけど、もう少しオブラートに包まない?
「やりゃできるんだからやれよ」
「だって別に興味ないし」
昔はまだやる気があった。家には私以外子どもがいなくて、代々騎士の家系だったから、私が継いで当主になる予定だったから。当主になるために、騎士になるために学ぶのは楽しかったし、私には合ってた。けど、七歳になったときに弟が産まれて、私の学んできたモノは取り上げられた。
「騎士になるためにずっと育てられてたのに、急に道全部壊されて全く違うモノになれ、は無理だよ」
ずっとスカートなんて履いたことなんてなかった。ずっと男の人の服を着ていた。だからこそ、突然取り上げられて、令嬢になれという周囲の圧は、苦しかった。
「カラリエさんみたく、こっちに産まれたかったよ」
ここは女性、特に令嬢が騎士をしていても特に不思議ではない。あっちは法律上問題はなくても、やはり視線が痛い。メリアとカシアさんは平民という身分やニーチェル公爵の推薦で入ってる。
「オリヴィエからすれば、生きにくいだろうな」
「あれもダメこれもダメ。そもそも私に与えたのはあっちなのにね」
なんでみんな取り上げるんだろう。なんで、私らしくいさせてくれないんだろう。
シエルさんのおかげで騎士団にはいれる。けど、結局みんなに遠巻きにされてるから普段は顔を出してない。家の人たちと稽古するのが常。お父さんは聞いてこないし、お母さんは無茶しなければいいと言ってくれてる。正直、それがなかったらとっくのとうにシエルさんかリリアナちゃん辺りに泣きついてハゼルトでお世話になってると思う。