123.
なんとなく分かってたが、こいつらどこかに行く気がねぇな。リリアナ嬢がバラけさせたものの、ゼクトとオリヴィエはすぐに城に向かうし、カラリエさんとローズ卿、カシア卿もいる。いないのはシャルフって人だけか。
「で、何すんだよ」
「観察しかなくない?」
なくねぇよ。リリアナ嬢が侯爵に頼まれたことしておけって言ってたろうが。それと、勝手に人を観察するな。
「気になるし~?」
「アストロもサジュエルの気になってたろ」
「気にはなるが、あそこは勝手にくっつくだろ」
殿下とリリアナ嬢の方が心配だろ。あそこ一切進展ないぞ。
「俺は婚約破棄してほしいから」
「リリアナちゃんがハゼルトの当主になってくれた方が楽だし」
「リアが皇后だといろいろ面倒だしねぇ」
「好き勝手する未来が見える…」
……そう言えば、ここにいるのはリリアナ嬢が殿下と結婚しない方が都合がいい奴の方が多いのか。カラリエさんに関してはどっちでも問題はないしな。
「あの暴君をあの皇子が上手く操れるとも思えんしな」
「リリアナ嬢が暴君?」
「あぁ、公子はまだ知らないのだったか」
ハゼルトのことは聞いてるが、ゼクトたちが知っていることよりは少ないだろうな。俺は少しずつ必要なときに親父が教えてくるだけで、ハゼルトに関する資料なんかは見せてもらえてない。
「リアは───」
ローズ卿が放った言葉に、俺は身体を強張らせた。言葉がでなかった。そんな俺を見てローズ卿は意地が悪そうに笑い、知るはずないもんねぇ、と言う。
「さて公子。君には二つの選択がある。一つは今のことを公表する。そうなればハゼルトは終わりだろうね。君もハゼルトの首輪という役割から解放される」
「……けれど、それをしようとすればあんたらが殺しに来る」
ここにいる全員に脅されているワケだ。共犯者にならなければ殺すと。親父が教えてくれなかったのは、安全のためだろう。
「………一ついいか」
「いいよ」
ふとした抱いた疑問。それを聞けば、予想通りの答えが返ってくる。そうなると出てくるのはそれが可能なのか、というものだが、できるんだろうな。それほどの力がある。
「俺に話した理由は」
「【幻音の奏者】に言われたから」
誰だよ。魔術師ではないだろうし、別の人間……まず人間か? 他種族の可能性もある。
「今は人間だよ」
「……それは重要機密じゃねぇのかよ」
頭痛くなってきたんだが……。今はってことは他種族なのは合ってる。が、問題は確実に転生者とか言うので人間になってるってこったろ。そうなると、人並み外れてるのがそいつだが、
「どいつもこいつも人外みてぇな性能しやがって……」
俺の周り、化け物じみた奴ばっかで分かるか、こんなクソゲー。