122.
僕たちだけなんで男同士のペアなの? いや、ナイジェルさんが嫌だとかではないけどさ。明らかに僕たち適当だよね。
「えー、どうする?」
「適当に回るしかないでしょ。僕は特に行きたいとこないから君の行きたいとこ行こ」
僕もそんなにないんだけど……。とりあえず、ふらふら散歩感覚で行くか。
* * * *
第二王子のお守り任されるのは想定外だったなぁ。てっきりオリヴィエをペアにさせるんだと思ってた。ゼクトとペアがよかったけど、さすがに無理だよなぁ。一応護衛として来てるワケだし。
第二王子が食べたいモノを買っているため適当に端の方にある木に背を預ける。日陰でちょうどいいね。ここなら見えるし、何かあっても対応できそうだ。
「失礼いたします」
「……はぁ、何?」
どうやら休憩はないらしい。知り合いの部下がこんな真っ昼間から来てしまった。それにしても珍しい。急ぎなのか、それとも結界やらに不具合があるのか。
「何者かが結界の一部を破壊しました」
「目星は」
「ある程度は」
面倒だな。結界を壊されたとなると、かなりの実力者か、それとも例の面倒な狂信者たち。どちらにせよ、目的はリリアナちゃんとアイリスちゃんだろう。リリアナちゃんはハゼルトの姫であり魔術師ですら下手に手を出せないほどには他種族に愛されている。アイリスちゃんは守護獣の影響で狙われやすい。
「必要な情報集まったら報告して。結界は急いで修復。魔術師にも報告したら帰っていいよ。第六魔術師はアディッサ嬢といるはずだから報告するなら第四魔術師にね」
あの人、否定するクセに話しかけるとバカみたいに怒るんだよなぁ。フォールトもそうだけど、なんで僕の周りってこんなにどこか狂ってるのが多いんだろう。
「ナイジェルさん、わたあめ食べる?」
「え、別によかったのに……。ありがとう」
第二王子も大変だろうに。フォールトは常人ではない。軒並み外れた魔力と自然との調和率は目に見張るものがあり、守護神であるフローリアに愛されているとよく言われている。そんな兄を持つと面倒なことこの上ないだろう。それを言うとユラエスもそうなんだけど、あそこはもう規格外だからノーカン。
「ナイジェルさんって、なんで神官なんてやってるの?」
「なんでって?」
「よく溜め息ついてるし、嫌ってそうだから」
「……別に、言われたからだよ」
ゼクトと一緒に魔術師に拾われた。本当は僕をユラエスの側近に、ゼクトをリリアナちゃんの側近にして血を管理したかったんだろう。けれど、僕には人よりも多く聖力が備わってた。神殿が黙ってるワケもなく、僕は神殿に行くことになって、神官にされた。
別に、逃げたきゃいつでも逃げられた。迷惑はかけるけれど、魔術師たちはそういうのを気にしない。好きにしろと言ってくるのは目に見えている。
「いつの間にか大神官なんかになってたけどね」
正直、地位はどうでもよかった。宗教なんていざとなったらなんの役にも立たないゴミ同然だ。だから神官になったときにまず得たのは聖力の使い方。貪欲なまでに知識を得た。ほどほどにやることをやっておけば地位が落ちることもないから楽だった。
「……強いて言えば、使命かな」
そういう役割。そういうことをする運命なんだ。そうしなければいけない理由があって、そうしろと言う存在がいる。それがこの世界の理だ。
「難しいね」
「そうだね。けど、必要なことだよ」
君みたいな子どもが、大人に利用されて、無意味な犠牲にならないためにもね。