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119.




クラリッサとの仲はいいし、喧嘩などをしたこともないと思う。出会ったのは四歳のときで、政略結婚だったけれど、そうは思えないくらいには仲がいいと自負している。だからこそ、リリアナと殿下が心配だ。父さんたちは恋愛婚がほとんどで俺も政略結婚ではあるが愛し合ってる者同士。ティアナとエルヴィスも元は繋がりを強固にするためにという理由でのモノだったらしい。


「殿下の一方通行よね」

「リリアナが少しでも気づいてくれればいいんだけどね」


殿下に限らず、ゼクトの気持ちも一方通行なんだけどね。

リリアナは忖度なしで可愛い。十人中十人が可愛いと言うくらいには。人形姫、なんて名前で呼ばれることもあるけれど、それに関しては表情があまり変わらないからなのが半分、人形のように美しいからなのが半分だ。


「ハゼルトの人形姫。元々は確か、モノを操るからなのよね?」

「そうだね。リリアナは正面からと言うより、背後からの不意打ちや闇討ちが得意だから」


普段は後衛とか言って誤魔化してはいるものの、リリアナは毒殺やら暗殺やらを得意としている。ゼクトやフォールトが表で行動してリリアナが裏で暗躍する。あいつらは基本それで動いてる。


「あいつら、組む必要あるのかしら」

「ないね」


オリヴィエもそうだが、伯父上たちが直々教えている奴らは大抵一部隊くらいなら単騎で勝つことができるくらいには実力がある。それでも組むのは形式だから。

前衛後衛をそれぞれ三人ずつ出すことが基本。だからあの四人に関しては伯父上曰く、ローズ卿とカシア卿を含めた六人で組んでいるらしい。ただ、リリアナ以外前衛の方が向いているから組むと言うより、同時に攻撃しているだけだとか。


「個々が強すぎるものね」

「周りを尊重して意見を取り入れられればいいんだけどね」


ローズ卿とカシア卿に関しては何も言えないが、あの四人は本当にな。リリアナに関しては秘密が多く、当たり前と言えば当たり前だが、俺を信頼していない。ゼクトもオリヴィエも、俺よりハゼルトのことを知っているようだし、フォールトに関しては俺より仲がいい。


ティアナたちと仲よくして、令嬢らしくのびのびと過ごしてほしい気持ちはある。けれど、それでリリアナらしさが消えるのは嫌だ。ゼクトと距離が近いとか、年頃の令嬢なのだからとか、そういうのを言っても、リリアナは笑顔で以後気をつけると言うだけなのだろう。そういう子だ。


「……ユラエスはお伽噺のお姫さまを眠りから覚ますのは真実の愛というやつ、どう思う?」

「現実ではあり得ないけれど、お伽噺だからね。子どもたちに夢を与えるのなら、それでいいんじゃないかな」


悪影響を与えるのならまた別だけれどね。それにしても、なんでそんなことを?


「昔会ったことがある子が、面白いことを言っていたのよ。『お姫さまを眠りから覚ますのは真実の愛なんかじゃなく、お姫さまのことを理解してくれる存在だ』って」

「子どもはそういうのに憧れを抱くものなのに、珍しいね」

「えぇ……。一番子どもっぽいのに、一番大人みたいな子だったわねぇ」


クラリッサはときどき、懐かしむように空を見上げる。その子どものことを思い出しているんだろう。クラリッサが俺たちと会う前に出会った子どもらしく、独特な価値観を持っていたらしい。会えるのなら、会ってみたいな。






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