117.
二人で街を歩くけど、可愛い……。
「殿下?」
「なんでもないよ」
お願いだから食べながらこっちを見てきょとんと首をかしげるのやめてくれないか。可愛くて心臓がもたないから。
「食べますか?」
「もらおうかな」
リリアナが持っていたいちご飴を出してくれるけれど、手を離す様子がない。これは食べていいのか? いいんだよな? エルヴィスがティアナによくやっているが、それと同じでいいんだよな?
リリアナは何も言わないため、ありがたく食べさせてもらう。
「美味しいね」
「フルーツ飴はおすすめなんです。食べやすいですし、食感がいいんですよね」
食べ歩きには向いてるね。でも、リリアナが食べ歩きするのは意外だな。それに、お金渡してないけど、大丈夫か?
「あとで屋敷に請求来て私の個人資産から出るので大丈夫です」
令嬢は普通個人資産なんてないんだけど、なんで持ってるのかな。
「第一様がよくお小遣いくれるので」
「魔術師にお小遣いもらってるのか……」
前に会ったときも、第一魔術師はリリアナに優しそうだったな。ハゼルト侯爵や第四魔術師もそうだが、魔術師たちに大切にされてるね。
「ハゼルト侯爵は周囲には冷たい印象だったんだけど」
「優しいように見えます?」
「身内には優しそうじゃないか?」
ハゼルト侯爵との関わりは学院に入ってからが多いし、それ以前はあまり関わりがなかったから違うかもしれないけれど、少なくともそう感じたよ。
「伯父様たちが優しいのは、私が最高傑作だからですよ」
「最高傑作?」
「………この話は帰ったときにしましょう。今はお祭りです」
……少し、距離を取られた気がする。リリアナは昔から深く聞かれたりするのが嫌いだ。分かっていたから、そうしてこなかったのに、間違えた…。
「花姫さま、今日はあの兄ちゃんたちとじゃないのか?」
「別にいつも一緒じゃないですよ?」
フルーツ飴の店の人が声をかけてくれたからよかった……。それにしても、この国だと貴族と平民の距離は近いのか。
「それとこれ。花姫さまの友人ってのから預かったぞ」
「手紙ですか?」
リリアナは手紙を受け取り中身を確認すると、露骨に嫌そうにする。魔術師たちからのではないだろうし、誰からだ?
「勝手に来るなと言ってるのに……。困った人たちですね」
「知り合い?」
「ハゼルトの客人です。どうせ勝手に来ているでしょうから、会う必要ありませんよ。国賓ならば明日会いますし」
手紙を出している時点で、国賓として招かれているワケではなさそうだな。
「まぁ、ティアナみたいに突撃してこないだけマシですね」
「あれは早々ないだろ…」
「寝込みに来られて魔法で迎撃したことありますよ」
どうやって屋敷に入れたのかも気になるが、人を駆除対象のように言うのはやめようか……。