116.
魔法でそれぞれをペアで飛ばしましたが、大丈夫そうですね。この国ではいくらでも魔法を使っていいと許可を得ているのでとても楽です。
「……相変わらず、すごい魔力量だね。減っている気配がない」
「魔法を使って魔力切れを起こして動けなくなる、ということがないように、魔力を別のモノに貯めてあるんですよ」
ゼクトや再従兄様もやっていますよ。魔力とは半無限ではあるものの、回復速度は人それぞれ。だからモノに魔力を入れておき、いざとなればそれから先に魔力を使う。そうすればすぐに魔力切れを起こすということを防げます。
「それも魔道具?」
「魔道具もありますが、身近なモノに込めたりもします。私はユイたち人形に魔力を込めて管理してもらっていますし」
「人形は何人いるんだ?」
「えっと……動くのは二十六人ですかね」
動くというか、話したり意思持ってたりする子はそのくらいです。製造過程は秘密ですけど。
「魔塔の研究で?」
「それもありますが、たまたまですかね」
正直、造った正確な方法や日にちを覚えていないんですよね。何かをしていた過程で造ったんだとは思うんですけど。
「ユイは物心ついたときには一緒だったので、自然とそうなったのかもしれませんし」
「リリアナが人形を持ち歩いてるところは見たことないな」
「人形を保管するようの部屋にいますからね。それに、誰かに奪われては嫌ですから」
自分のモノを奪われるというのは、とてもムカつきますからね。そんなことされるくらいなら、閉じ込めて誰にも見つからないようにするのが一番です。
「リリアナの幼少は気になるな…」
「ティアナの行動より楽しませられますかねぇ」
「あれは……まぁ、いつもだからね」
基本的に、子どもを領地で、それも母親のみで産むということはほぼありません。少なくとも、この大陸では貴族は皇都で出産します。何かあったときに迅速に対応できるように。ですが、私は領地で産まれたのでお父様たちに会うまで領地で過ごしましたし、ゼクトも私の世話のために領地にいました。だから、殿下たちは私とゼクトの幼少だけ知りませんし、私とゼクトも殿下たちの幼少を知りません。
「ハゼルト侯爵たちとは?」
「四つのときにお会いしたはずです。魔力暴走を起こしたんだとか」
「侯爵たちが出向くほどの暴走……。普段はやっぱり抑えてたりするの?」
「そうですね。私は他の方より魔力量が多いのである程度は」
伯父様たちに徹底的に教えられましたからね。人と関わるなら魔力の制御ができなければ意味ないと。実際そうですし、感謝はしてますが、スパルタなんですよね。訓練であのオリヴィエ様が逃げ出そうとするくらいですし、ゼクトと再従兄様も疲れきって帰ってきますし、学生相手にどんな訓練をしているんですかね。