109.
私たち、普通に喋ってるけど、謁見の時間とか大丈夫なのかな。
「あぁ、それは大丈夫。だって」
クロフィムが説明しようとすると勢いよく扉が開いて、一組の男女が入ってくる。女性の方は走ってきたかと思えばリリアナとユラエスを抱きしめた。
「リリアナ、ユラエス!! 久しぶりねぇ」
「こんな風に、母さんが二人のこと大好きだから、行く必要ないんだよね」
なるほどね……。二人に抱きついてるのは王妃殿下ってワケだ。となると、こちらは国王陛下か。
「ユイちゃんも久しぶりね。元気だったかしら」
「はい。王妃殿下もお元気そうで」
「王妃殿下はユイさんのことご存じで?」
「昔たまたま会ったのよ。リリアナの人形と聞いて合点がいったわぁ。大切に持っていたのをよく覚えてるもの」
リリアナが人形持ってるイメージあんまりないけど、昔は人形っ子だったのかな。
「離してやりなさい。それと、走らない」
「身内なんだから、少しくらいいいじゃない」
クロフィムは王妃殿下似だな。マイペースなところとかそっくり。王太子殿下は国王陛下似になるのかな。
「リリアナとユラエスも、嫌なら嫌と言いなさい」
「嫌というか」
「婚約者の前なので、できれば控えていただきたい…」
ユラエスに関しては思春期の男の子だから、ちょっと刺激が強そう…。王妃殿下はしぶしぶと言った風に二人を離して席に着き、国王陛下も王妃殿下の隣に座る。
「はじめまして、カトレア伯爵令嬢と聖女殿。話は聞いているよ」
「お世話になっています」
「マリティアちゃんから聞いていたけれど、すごいわねぇ」
マリティアさんから? 何か言われてるのか?
「母さんはマリティアと同じ夢見持ち。フォルフィティア公爵家は昔から夢見の力を持つ女性がいて、国の災害とかを回避したり被害が最小になるようにしてたんだって」
「夢見は祝福なんですか?」
「祝福の一種ってシエルは言ってたわね。メルトが言うには、フローリア様の力の一部とか……。あの二人、たまに言うことが別々なのよね」
花の女神フローリア。国の守護神の力……。それが公爵家に、それもおそらく定期的に現れてる。
「なんで王族じゃなくて公爵家が?」
「力を分散するためでしょ。一つの一族が力を持ちすぎれば均衡が崩れる」
「例外がそこにいるが、それに関しては最上位種族のさらに上の存在から気に入られてるしな」
「創造主ってやつ?」
「正確には、その子どもだそうですよ」
聞けば聞くほどハゼルトって不思議だよね。普通なら好き勝手してるものだろうに、おとなしいし。
「誓約やら契約やらで手出しできないんでしょ。ハゼルトって私情で殺すことができるのは身内だけだし」
逆になんで身内を許可したんだよ。身内こそやめなさいよ。おかしいでしょ。