ホラーな洞穴の手前【WEB】
ホラーな洞穴の手前
あれは、冬将軍さんがひと息ついた頃だったでしょうか……?
白鳥さんが田んぼに群がり、そのこんもりとした白い群れを横目でチラチラとチラ見しながらの帰り道。
「寒かったっすねぇ……田んぼに白鳥メッチャいますけど? なんか水にスイスイしてないと感じでないっすねぇ? ドタドタ歩きながら田んぼ突っついてますけど……寒かったっすねぇ……」
「今日はぽかぽかしてて、言うほど寒く無いと思うけどな……? 白鳥可愛いじゃないのよ! おチビちゃんたちもいるしね!」
「ちょっと待ってて下さいね!」
「何を待つのよ……? 帰り道だけど……?」
うりゃああああああああああ……あっ!
「駄目だってばさ! 泥濘んだ畦道走ったら凹むから! 転んじゃうよ!」
うりゃああああああああああああああ……。
グゥエッ! グゥエッ! グワァッ! グワァッ バサバサバサバサバサバサ……。
うわあああああああああああああああ……。
「あっ! 駄目っす! ヤバいっす! 逃るっす!」
ヴゥエッ! グゥエッ! グワァッグゥエッ! グゥエッ!グワァッグワァッグワァッグワァッ!
バサバサバサバサバサバサバサ……。
「ちょっとやめてよね? 白鳥の群れ引き連れて来ないでよ!」
「ちょっと脅かしてやろうと思ったら……意外に強気な奴等でした〜っ!」
バサバサバサバサバサバサバサ……。
グゥエッグゥエッ! グゥエッグゥエッ!
バサバサ! グワァッ! グワァッ!
バサバサバサバサバサバサバサバサ……。
グワァッグワァッグワァッ!
グゥエッグゥエッグゥエッグゥエッ!
バサバサ! グゥエッグゥエッ!
バサバサ! バサバサ!
グワァッグワァッ! グワァッグワァッ!
バサバサバサバサバサバサ……。
「あっ!」
ドタ! ペチャッ!
「ちょっとお! 何やってんすか!」
バン! ペチャッ! バン! ペチャッ! バン! ペチャッ!
最悪……。
グワァッグワァッ! グワァッグワァッ!
バサバサバサバサバサバサ……。
「あいつら、近くで見るとでっけぇ! おっかねぇ!」
はあ〜っ……べっちょり……。
「もういいわ(カッチ〜ン壱!)! あそこの茂みまで全速力でダッシュするわよ!」
「がってんしょうち!」
「はあ(この状況でおちゃらけるってな何事なの? あの馬鹿は(カッチ〜ン弐!)! ギロリ!)……?」
グゥエッグゥエッ! グゥエッ!
バサバサバサバサ……バササササ……サササササ……。
「えっ? ダッシュするんじゃ……無いんですかね……? 洞さん……?」
気が付くと洞さんに胸ぐら捕まれ、蔑む表情でガン見されてる……。
「てぇめえ! ざけんじゃねえぞぉっ! ああっ!」
「ほ……洞さん……もしかして切れてます……?」
「切れてなんか無いわよ〜〜〜〜っ!」
「ぶ……ぶち切れてるじゃないですか? ふっ……負のオーラ全開ですよ! ヤバいっすよ! あれだけ騒いでた白鳥何かシレッと何事も無かったかの様に向こうに戻ってきましたもん? 自然の生き物の感は鋭いっすね!」
「白鳥のせいにしてんじゃねえ)! てめぇに聞いてんでよ!」
グイグイ! グイグイ!
「くっ……苦しいん……です……けど……」
グイグイ! グイグイ!
「今年壱年よ〜く覚えておきますからね! 羽目を外さずいい子ちゃんにしてなさいよ! 壱張羅なんですよね……この服買い替えるのお願いね! あんたのせいですからね!」
「マ……マジっすか……でもそれで怒りが鎮まるんなら……仕方無いですね……自然全開の白鳥に囲まれた、時はもうサスペンスホラーでしたけど! 洞さんの方が超弩級で怖いっす!」
「わたしもとっても怖かったわ! あれはもうトラウマ級ね! どうやらわたしが転んだ事以外は、被害はなかったようね! あの白い群れ、何故かわたしに向かっ来てたのは、何事だったんだろうな……? あんたが脅かしたのに、なんか割に合わないわ? これも貸しって事にしといてあげるからね!」
「あれっ? この道って壱本道でしたよね?」
「何時もの通い慣れた道よ? この道、真っ直ぐ行って曲った所が寮じゃないの……? アレ? ここ何処だろ……? そんなに道に迷うほど走って無かったよね? 白鳥に囲まれただけだったよね……?」
「ねぇ……洞さん? あれって洞穴ですかね?」
「あんた! わたしの話し聞いて無いでしょ? あれは防空壕の跡とかじゃ無いかな? 妖しげな蔦がメッチャぶら下がってるけど……?」
「ねぇ……洞さん? あれって洞穴だと思いませんか……?」
「何よ……? 洞穴かも知れないけど、聞いて無かった? 防空壕の跡じゃないかなって言ったんだけど……?」
「ねぇ……洞さん? あれって洞穴ですよね?」
「鸚鵡返しはやめてくんないかな……えっと(はあ〜のっといてやるか……)……ホラーな洞穴だったりしてね! あははははは……冗談よ! 取り敢えずボケてあげただけだかんね!」
「行って見ませんか?」
「行かないよ! 怖いよ……あんた目がマジなんだけど……?」
「行ってみましょうよ!」
「行かないよ!」
「なんで即答なんですか? 行ってみましょうよ! 先っ穂まででも!」
「先っ穂って……? 穴の中のどん詰まりまでって事でしょ! 行かないよ!」
「行かない行かないって事は……裏を返せば、行きた〜いって宣言されてるんですよね!」
「本当に行かないよ!」
「またまたまたぁ!」
「本気と書いて、マジで行かないよ!」
「またまたまたぁ!」
「そっか! ハッキリ言うね! ハッキリ言わないと分かんないタイプだったね! 行かないよ!」
「またまたまたぁ! 洞さん! 行かない行かないって言っておられますけど、体は正直ですね! ほらもう! もう洞穴の手前まで来ちゃいましたよ! ほらほらほら……ほら〜……」
「この洞穴、メッチャ……背中がゾクゾクするわね……?」
「ちょっと先っぽまでですから〜あ! さあ! 入って見ましょうよぉ……洞さんてばぁ!」
「そういえば……? 実録お化けの苑のお化け屋敷出てから……ずっと寒かった寒かったって言ってたわね……?」
「アレはほんと寒かったっすよねぇ! ぐだぐだのお化け屋敷……思い出しただけでも、おお! 身震いしますよ! お〜寒!」
「まあ……演出は激寒だったわね!」
「わたしをもっと怖がらせてよ〜って! 言ってましたもんね!」
「言ってたかしら……?」
「言ってましたって! じゃあ! 行きましょうか! 怖がりに!」
「いやいやいや……この話しの流れで、そうね行こうねってならないからね! 絶対に!」
「洞さん! 後ろ使えてますよ? ここって大人気なんですね! 気が付いたら、メッチャ行列出来てますけど……? メッチャ睨まれてますもん? 早く入りましょうよ!」
「はい……? 何を言ってるの……? 誰もいないけど……?」
「あっ! すみません……直ぐ入りますから! すみません……ほらあ! メッチャ怒られてますよ! もう行くしか無いでしょ!」
「何を……言ってるのかな……? わたしにはわからないんだけど……?」
ホラーな洞穴の手前……綴らう者たちの行列になっておりました。
壱体全体どうなってしまうんでしょうか……?
次回、ホラーな洞穴に続く……。
パチン! パチン! パチン!
ではではでは! わたしから、次回の講釈をたれたまいましょうぞ!
ベンベンベンベンベン!
さあてさてさて!
パチン! パチン! パチン!
ホラーな洞穴の手前まで、なんやかんやでやって参りましたりましますます!
ベンベン!
このお弐方は、いったいぜんたいどうなってしまうのやらやらで御座います。
ベンベン! ベンベン!
お弐方の後ろには本当に行列が出来ているのかいなかは〜っ!
ベンベン!
それは! ホラーな洞穴! 次回の講釈でぇ……。
ベンベンベン!