特務機動隊小隊長 木村正隆 (5)
『始末書も所轄に土下座するのも後でいい。お前に新しい任務が有る』
上司である浜田中隊長に状況を報告した直後に返ってきた答がそれだった。
一応、部隊員は全員無事。
俺達が雑居ビルを出てしばらく後に、奴らがアジトに使っていたフロアで小規模な爆発。
幸いにも部下は全員無事……車は……修理と廃車のどっちがコスパが上か判断が難しい状態。
ビル内で緊縛&放置プレイを楽しんでいた刑事部のマヌケどもも、命に別状は無く、体には爆弾その他も魔法的なものも、一切の罠の類は発見されなかった。
「どう云う事ですか?」
『松本夫婦が率いるグループが……誘拐事件を起こした。被害者は、よりにもよって警察官の家族だ。ただし、松本夫婦のグループが何かの要求を出した形跡は無い』
「警察官? 都警の幹部の御家族ですか?」
『一応、管理職だが……管理職でも下の方だな』
「何故、そんな警察官の家族を誘拐したのでしょうか?」
『まだ気付かんか? それを探る為に必要な情報を持ってるのが、お前だからだ』
「はあ?」
『つくづく、勘の鈍い奴だな……。お前の嫁と娘が誘拐されたんだよ』
「え……」
ついさっきの……奴らがアジトに爆発物を仕掛けている可能性に思い至った時以上に、頭が真っ白になった。
『あと……お前の子供が幼稚園に入った時に受けた脳検査の結果だが……お前の娘は「まつろわぬ者」の可能性が有る。何故、報告していなかった?』
「え……いや……その……」
次から次へと、とんでもない話を聞かされ……脳が全く働かない。
「あ……それは……全て嫁に任せていて……嫁からは何も聞いて……」
『仕事熱心も結構だが……今からの任務中は……私用の携帯電話の電源をONにしておけ。その上で、今から言うアプリを入れろ。それでリモートでお前の携帯電話を監視出来るようになる。松本夫婦から、お前の携帯電話に連絡が入れば、こっちでも、それを検知出来る』
「了解しました……と……ところで……」
『何で、お前と嫁が一般人なのに、お前の娘が「まつろわぬ者」なのか訊きたいのか?』
「は……はぁ……」
『俺も中隊長になる時の講習で専門家に色々教えられたが……イマイチよく判ってる訳じゃない。だた、「まつろわぬ者」とは、似たような能力を持つ複数タイプの「異能力者」の総称だそうだ……。その中には、両親が「まつろわぬ者」でなくとも、隔世遺伝だか何だかで「まつろわぬ者」として生まれてしまう子供も居るらしい』
……そ……そんな……では……。
『今から、お前は、お前の家族の誘拐を捜査し、犯人を追え。小林の小隊をサポートに付ける』