特務機動隊小隊長 木村正隆 (4)
「目撃者や連れてけない参考人は全員殺処分。途中の各階は一応チェック。怪しい奴が居たら、即殺処分。ここの建物を出てからの行動は、その時に指示する」
「あ……あの……小隊長」
「質問は後だ。全責任は俺が取る」
「は……はい」
考えられるのは、ただ1つ。
テロリストどもや、偽装「関東難民」を、このシン日本首都に送り込んでいる何者かどもも、現政権と同じ事を考えていたのだ。
強力な精神操作能力者が臣民を支配する恒久平和体制の確立を。
奴らが邪悪であっても現実主義者なら、現政権と同じ考えに到る筈だ。
そして、俺は……多分だが……俺を含めた多数の警察官が、奴らが生み出した人工の「精神操作能力者」によって気付かぬ内に精神操作を受けていたのだ。
もう何も……信用出来ない。自分自身さえも……。
信じられるモノが有るとするなら……警察官としての誇りだけだ。
いや……待て……やはり、何か、おかしい。
俺が部下にやった命令はマトモなのか? マトモじゃないなら……何で部下達は、俺の命令に従っている?
考えるのは後だ。
階段を下から上って来たババアを銃殺。
次の階の部屋を1つ1つチェック。
玄関のドアに鍵がかかっていない部屋を発見。
玄関ドアを開け……。
「えっ?」
ダイニング・キッチンに居た……。
「うわああああッ‼」
「小隊長ッ‼」
父親と母親と……俺の娘ぐらいの齢のメスガキの3人家族だった。
まるで、俺自身と俺の家族を銃殺するような嫌な気分だが……やるべき事は、やるしか無い。
とは言え、冷静では居られず……何発も弾を外してしまい……。
「おい……お前の拳銃を貸せ」
俺は部下の1人に、そう命令した。
俺達は、荒事が想定される場合でも、弾倉は1人につき1つしか支給され……。
待て……やはり、何かおかしい。
世界に冠たる経済大国として復活した筈のこの日本で、何故、慢性的に警察が使用する銃弾が不足しているのだ? それも、警官の射撃訓練がロクに行なえない位に?
それとも……何か、納得出来る理由が有るのに……俺の頭が……。
「……小隊長……」
部下の1人が拳銃を差し出すが……。
「お……おい、待て、どうなってる? 何で同じ部隊なのに、俺とお前が使っている拳銃が違う?」
俺が使っていたのはオートマチック式で……部下が差し出したのは……リボルバー式の拳銃だった。
「あ……えっと……たしかに不合理だなぁ……と思った事は有りましたが……前々から支給されてる拳銃の種類は人によって違ってましたよ」
俺は……絶叫をあげそうになるのを必死で押えていた。
よくよく思い出してみたら、こいつが言ってた通りなのだ。
たしかに俺は根っからの体育会系だ。頭もいい方じゃない。
でも……何故、俺は、そんな不合理な事に、今まで何の疑問も抱かなかったのだ?
俺は……もし、俺達が、誰かに精神操作系の異能力で記憶や感情を書き換えられているとしたならば……「俺達の正体が何者である可能性が一番高いか?」について今思い付いた考えを脳内から捨て去り……。
何をやってるんだ、俺は? 異常なんて無い。俺の脳味噌は正常だ。ましてや、俺達が、何者かによる精神操作で警察官だと思い込まされて、テロリストの手先にされてるどこの誰かさえ判らない寄せ集めのチンピラだなんて、馬鹿馬鹿しい事など有る筈が無い。
……俺は、自分自身に、そう言い聞かせ、自分の心を落ち着かせようとした。




