Ⅰ ここどこ?
強くなりたい
自分を守れるぐらいには・・・
どうせ死ぬなら、強くなってからでも遅くない。
外を覗く。
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「ギャハハ!これくらいで勘弁してやるよっオッサン笑」
俺をあざ笑う3人組のちんぴらどもの声
悔しい…弱いことが…
何もできなかった。
気付いたら殴られていて、気付いたら地面に倒れていた。
この歳になっても情けない気持ちになるなんて、本当に俺はどうしようもない。
体中がズキズキと痛む。
口の中も気持ち悪い。
血だれけになるとこんな感じなのか。
何で狙われた?
さっきか…。
町を歩いていた時、俺を値踏みしていたこいつらの顔をよく覚えている。
「あつっつ…、」
砂と血の味がする。
起き上がろうにも体のいたるところが痛くて動かせそうにない。
このまま野垂れ死ぬのか…
「くそがっ」
痛さと悔しさと情けなさで心が腐る。
だんだんと意識が遠のいてきた…
くそっ何でこんな目に…
視界がどんどん暗くなっていく…
てかここはどこなんだよ…
また行き場のない怒りを覚えると同時に意識がなくなった。
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「はぁ~疲れた~」
コンビニ袋から弁当と梅おにぎりを取り出しながら座る俺。
これは一昨日の夜の記憶だな。
ぼんやりと覚えている。
俺はどこにでもいる冴えない男だ。
何となく大学に入って、何となく就職して、
そして今年で30歳を迎える。
本当に何もない人生だよな…。
缶チューハイを煽りながらしみじみと感傷に浸る。
歳を重ねるごとに思うことはある。
「疲れたな」
ニュースを見ると人を殺したものや芸能人の不倫ネタなどが目につく。
人ってみんな自分勝手だな。
ふと仕事先のことを考える。
人って難しいよな。プライドとか邪魔して話こんがらがるもんな。
みんな自分勝手でほんと嫌になる。
そんな風に考えていながらコンビニの弁当を流し込む。
そして眠くなった。
最近寝落ちするんだよな…
ちゃんとお風呂入って…
ベッドで…寝ないと…
そのまま眠ってしまった。
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どれくらい眠っただろうか。
背中が痛い。
目覚め具合からして快眠とはいかなかったらしい…
だからちゃんと布団で寝ないとって…
…てか寒いなぁ
少しでも体温を確保しようと、寝ているうちに蹴飛ばしてしまった膝掛け(毛布)を探す。
左手で探すも空をきる。
あれっ…ないなぁ…
あれっ…
…てか床が固い。
…って冷たいなおいっ!
ごつごつした石の感触とひんやりした質感にびっくりした俺は飛び起きる。
見るとと石の床だ。
「えっ何で?」
俺、自分の家で寝てたよな!?
てかここどこ?!
周りを見渡すとちゃんと家?らしきところには居るようだ。
(天井や壁がところどころ崩れているので家と呼べるかは分からないが…)
崩れたところからは太陽の光が差し込んでいる。
とりあえず自分の家でないことは確かだ。
光が当たっているところは暖かそうだが、日陰の今自分が寝ていた場所はひんやり冷たかった。
「いったいどうなってんだ」
訳がわからないまま辺りを見渡す。
服は…着ている。昨日のままだ。
でもそれ以外は何も持っていない。
携帯も鞄もソファーもテーブルも。
何一つない石の家(廃墟)にぽつんと自分だけ。
「何もないな…」
頭が真っ白だったけど、だんだんと頭が冴えてきた。
とりあえず現状確認だ。
外を覗く。
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なんかみんな武器とか持ってるんですけど・・・