第9話 帰宅
・・・よかった。では、また詳しく打ち合わせをさせて頂きたいので明日にでもお会いできるでしょうか?
男と明日会う約束をし、リリアは早々に店を出た。
予定外に時間は過ぎていたようだ。気づけば家に帰る予定時間の1時間以上オーバーしてしまっていた。リリアはその事実に気づき焦った。ヤバい!タイムサービスが!!急いで馴染みのスーパー『トレビアン』に走った。ついたと同時に店内放送が響く。
「あ~あ~。本日のタイムサービスは終了です。みなさん、うちの子たちをしっかり愛して食して下さい。そして明日も戦え。手に入れろ!!明日のメインはボンド夫妻の天然無農薬野菜のホウレン草くんとキュウリちゃんの詰め放題200セル!、そしてとっておきは5名さま限り国産ステーキ牛500gがたった500セルだ!!お得、お得だよ~」
おおー!!
店全体に歓喜の声が広がる。
さようなら白菜くんと豚肉ちゃん。(今日の特売品)まっててね、ホウレン草くん、キュウリちゃん、そして牛くん!明日必ず君たちを奪ってみせるわ!
リリアは心で涙を流しながら新たな決意をし帰路についた。
「ただいま帰りました。」
「お帰りなさい、お姉さま。随分遅かったですわね。なにかありましたの」
帰るなりシンデレラが迎えて言う。
「ちょっと面白い本があって時間がたつのを忘れてたのよ。それよりお母様たちは?」
「まだ帰られてませんわ」
「そう。よかった。じゃぁご飯作るから洗濯物入れて畳んでちょうだい」
本当によかった。帰ってきてたら面倒だものね。リリアはエプロンをしながらシンデレラに仕事を言いつける。洗濯物を依頼したのはもし母親たちが帰った際にシンデレラがちゃんと仕事をしていると思わせるためだ。
「・・・わかりましたわ。あ、お姉さま、背中に蝶々が。」
シンデレラはそう言い、私の背中を触り蝶々を指の上に乗せた。
その蝶々はあまりにもあの眼に似ていて美しく吸い込まれそうな綺麗な緑色をしていた。
「あら、本当。こんな蝶々いるのね。初めて見たわ。悪いけどついでに外に逃がしてあげて」
リリアはそう言い、台所に向かう。
「ええ、お姉さま、そうしますわ」
シンデレラは微笑み姉の後ろ姿を見ながら言う。
そのまま洗濯物を入れ込むため外に出た。
今日は風が強い。
シンデレラは美しい金髪の長い髪が乱れるのも気にしなかった。そして、
“姿を現せ"
まるで呪文のように言葉を発した。
同時にシンデレラの手の中で蝶々が青く淡い炎に包まれ灰となる。
「・・・式神ね・・・・お姉さま本当にどこでなにをしてらしたの・・・・」
シンデレラの小さな囁きは風とともに掻き消えた。
どうでもいいとは思いますが
1セル=1円
1ギル=1万ってな感じです。