第7話 誘惑と微笑み
眼の前の男は何がしたいのだろう。私は怪訝な顔を男に向ける。
伝時屋も何もしゃべらない。
「あの本の著者、実は知り合いなんですよ。それで知り合いのよしみで頂きまして。自分でも1冊購入しているから余るんです。笑ったお詫びも兼ねてよかったら譲りますよ。」
知り合い?おいおい、あんなマニアックな本書いてる人の知り合いなの?ていうか、この人何がしたいのよ。わざわざ自分から関わり持ってどうすんのよ。
この時リリアの危険察知能力アンテナが動いた。
「せっかくですが、あの本は自分で買いますわ。実は借り物で返さないといけないので、人から譲って頂いたものを返すのは失礼になってしまいますもの。御好意だけ頂きます。ありがとうございます」
「そうですか。あの本限定本でなかなか手に入らないものですし、お値段も高額になると思ったんですがそれは仕方ないですね」
男は少し残念そうだ。
「・・・ちなみに御幾くらいですの?」
「そうですね、元の値段が2万ギルですが、今から手に入れるとなると倍以上に跳ね上がった金額になるかもしれませんね。」
「そうだなぁ~ウチも商売だからかかった金額分と手数料はしっかりいただくぜぇ。」
た、高い・・・
リリアは100のダメージを喰らった。瀕死状態である。
くっそんなに希少価値が高いものだったなんて!!」なんで図書館で借りれる本なのに・・・2万ギル×2=4万ギルとして・・・やばい。私のお金じゃ足りない。食費削ってもぎりぎり赤字。
しかもあの浪費家どもがまたドレスの新調でもしたら完璧ノックアウト!!
普通の貴族ならこんな思いせずに済んだのに・・・背に腹は代えられない!ここはせめて安く譲ってもらうしか・・・恥を捨てろ。リリア!今ならまだ間に合う。
「やっぱり譲って頂けますか・・・。」
男はリリアが瀕死の状態で青くなっているのを男は面白そうに見ていた。
「ええ、いいですよ。ただ1つ条件があります。」
男は微笑みながら言った。微笑みはとても美しく、普通なら人を魅了してしまうだろう。だけど私はその微笑みをみて早くも後悔の念にかられる。
ああ、やっぱり・・・・
その微笑みはリリアがよく知っている微笑みに似ていた。
そう、シンデレラの微笑みに・・・