第51話
案内されたのは小さな待合室みたいな部屋。小さめの丸い机に椅子が二つ。奥に小さめのソファ。
入って直に鍵を閉められたと思ったら背中を押され勢い余って前に倒れこんだ。
痛いじゃない。
そう思って付き飛ばした相手を睨みつようと後ろを向いた。
視線の先には敵意に満ちた視線が2つ。
私を案内したおじさんと、マリア様の部屋にいた教育係の伯爵夫人だ。
「落ちぶれた貴族の分際で王族に取り入りおって。お前のせいで妻は王女の教育係が外された。既に私の立場も危うい。どう報いてくれる」
なるほど教育係さんの旦那さんね。納得!でもあれは貴方の奥さんの自滅だった気がするけどね。
「どう報いると言われても・・・・・・・・もう一回一からやり直すと言う堅実なのは如何です?」
「ふざけるな!そもそも貴様の様な下級に堕ちた輩が王宮に出入りするだけでも許される行為ではないのに、私に指図するとは!」
一応誠意をもって答えたがお気に召さなかったらしい。そもそも聞きたくないなら言わないで欲しい。
にしてもこの人バリバリの貴族至上主義だな。落ちぶれた貴族や平民と仲良くする貴族はお気に召さないらしい。
「貴女のような人間がマリア様の近くにいたらマリア様が汚染されるわ。それなれば未来のこの国のあり方も危うくなる。貴女のような害虫は早く駆除しなくては」
およよ・・・・これは明らかなに私個人への敵意だ。しかも害虫とは。
「私をどうするおつもりで」
「安心しろ。殺しはしない。お前には罪人として私に捕まるのだから。おい抑えつけろ」
「でも貴女のその汚らわしい口はいらないわ。2度と喋れないようにしておかないと」
同時に両脇を後ろから他の誰かに抑えつける。なるほど、どこかに隠れていたわけね。
女は何かの瓶をもって近づいてきた。
目の前に映る女性は、貴族としての気高さも女性としての品も認めない。狂気じみているその目は自分がしている事が正義そのものとも言わないばかりだ。既に言葉は通じない。両方から抑えつけられひ弱な私としては大ピンチと言いたいところだけど・・・・・
「チュウ吉!GO!」
『はいでチューっ!!!』
「「っっっっっつつつ!!!??」」
「ぎゃぁぁぁ!」
「なっなんだっ!?」
リリアのドレスから出てきたチュウ吉が女の顔に向かって飛び込み、一瞬手の緩んだすきを使って、両側から抑えつけていた屈曲な男達の手から逃れ距離をとった。
甘くみないで頂きたい。何年あれの姉をしていると思っているのだ。こちとら禁断の森に行かされた時には謎の生物に四肢を縛られ、吊るしあげされた事もあるんだ。ええ、あいつはいつもの様にいい笑顔で笑ってましたよ。こういうのは力技だけではないのだよ、ワトソン君。
「あああああぁぁぁ、う、うでが。腕が熱い!」
チュウ吉に飛びかかかられて驚いたグラーフ伯爵夫人の腕に薬液が掛ったようだ。
その薬液により腕の一部にかかり火傷を負っている。
「うわぁーやっぱり硫酸系かーよかった。普通の毒薬系なら多少の耐性はあると思うんだけど、劇薬系は流石にねぁ。って、うら若き乙女になんてものを!ってかそんなん喉にいれたれたら死ぬよ!?」
「普通の乙女は毒自体に耐性はねぇーんだよ。お前はホントなんなんだよ」
後ろから声がした。
「だっ誰だ、貴様」
旦那さんの焦った顔。
どっかで聞いた事ある声と思ったけど、なるほどね。
「仕事変えたの?着ぐるみ暗殺者さん」
振り返ると何故かタコのお面を被った男が一人立っていた。
彼は答える事もなく、振り向いた事で私の後ろにいた男達と夫人を一瞬で気絶させた。
流石はプロ。早い。
「なっなんなんだ、貴様は!」
「なんだって言われても。こんなお面付けてる時点で答える気はないと気づかねぇか?」
「ふっふざけるな!貴様、この女の仲間だな!やかりこの女はこの国にとって害になる存在なんだ、早く駆除しなくては!」
「「やっ仲間じゃないから」」
やだ、シンクロしちゃった。
「まぁ、とりあえず生きて捕縛するのが『命令』ですから、お仕事させてもらおうかな」
そういい、着ぐるみ暗殺者基、タコ仮面は仮面の下で笑いながら指示を出す。
「エリーさぁ、君の美しい姿で彼を魅惑しておいで」
そういって彼は伯爵に向かって何かを投げつけた。