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第44話 ブルー×ブルー×ブルー





とうとうこの日が来た。

歓喜に満ち、興奮気味な姉と母を横目に見ながら微かに揺れる馬車の中でひっそりとため息をついた。

落ち着くのよ、リリア。

上手く行けば王族との婚約という名の最上級の玉の輿(姉か、最悪妹で許そう)、それがダメなら有力貴族や成り金への玉の輿、それかのパトロンを確保(愛人関係ないバージョン)、またの名をシルヴィア曰く、貢いでくれる人間の確保。最悪全部駄目だった場合は今回は諦め、ディオ君を紹介して終了。大丈夫、上手く行く。というか、本人がどうせ行くなら搾れるもんは全部搾って帰る気もあるようだから、少しは今よりましな生活が送れると期待しよう。え?それじゃぁ、他の人間が被害を被るだけだって?その人たちが落ちるとこまで落ちたとしても、自業自得な訳でもあるからね!あ、でも、ディオ君やマリア様を悲しませる様なことはしないよ!!そん時は全力でちゃんと止めるから!




「・・・・・ア、・・・リリア!」



「うへっ?はっはい!何でしょう、お母様」

冷やかで、強気な母の眼がリリアを見ていた。


「まったくあなたはどうしてそうなの!?人の話も碌に聞くことが出来ないだなんて」


「ごめんなさい」


「まぁいいわ。いいこと、どうせあなたは王子の眼には留まることはないのだから、くれぐれも粗相のないようにしてちょうだい。マリーとアルフォード王子の邪魔だけはしない様に」


「そうよ、リリア。地味なあんたが私の妹だと知られると、私もそう思われてしまうわ。未来の王妃に相応しいのは美しい私!美しい私の周りも当然美しくなくてはならないんだから」

どこの独裁主義者だよ!!??この性悪姉!だったらもう一人の義妹横に置いとけばいいのに。まぁ、確実に負けるだろうけど。

ってか、あの2人の中では既に王子との結婚が未来図になるとな!?妄想もここまでくると可哀そう・・・・・いやいやそんな失礼なこと思うのはやめよう。一応血の繋がっている相手だ。


「はい、分かっております。お母様、お姉様。お姉様の邪魔に成らぬ様、私舞踏会では隅で大人しくしております。美しいお姉様のことですもの、アルフォード王子もすぐにいらっしゃいますわ。私は隅で踊っているのを楽しみに観させて頂きます」

嘘は言ってない。

それなりに美しい姉の容姿と露出度の高めの赤いドレス。煌びやかというよりも、キラキラ、ゴテゴテした装飾品は人の眼に留まるだろう。王子が主役の舞踏会なのだから、普通は直に全体に挨拶があるし、誰が踊るかは言ってない。




「あら分かってるじゃない。私が王妃になったらあんたの結婚相手も私が考えてあげるわ」



「まぁ、ありがとうございます。お姉さま」

全然撤回。こいつが王妃なった日には縁を切って国を出よう。



「だってお母様、リリアは私と違ってなんの取り柄もない娘でしょう?私心配だわ」


「妹思いの優しい子ね、マリーは」


「当然よ。大切な妹だもの」


あ、今鳥肌立った。

思わず両腕を抱いて擦ってしまう。鎖骨のラインは見えるが、肩自体には薄く袖があり後方の腰の部分が大きめのリボンが特徴的なドレスをリリアは身に纏っていた。

前部分は白のレースと刺繍のみの地味なドレスではあったが、リリアはこのドレスを気にいっていた。そして首元に一つ


「でも、ホントあんたって地味よね。服装も身に着ける物も。なぁに、そのネックレス?誰に貰ったの?あら、ごめんなさい。そんな相手もいなかったわね。安物ばっかり着けてると、笑われるわよ」


「・・・・・・そうね、お姉様。これからは気をつけるわ。でも今日は地味なままの方がいいでしょう?より一層お姉様が引き立つわ」


「それもそうね。あんたも中々考えるじゃない」

そう笑いながら返す姉の声が遠くに聞こえた。


舞踏会のドレスを選んでいた時このドレスだと思った。

蒼いそのドレスは上から下にかけて徐々に色が淡くなっていくグラデーションのドレス。

少し闇色を混ぜた様な濃い蒼は朝日が昇る前の空の様、そこから徐々に昼の澄んだ淡い空色になるドレスは、まるで本当の空のようで。自由な美しい始まりの空のようなドレスを一目で気に入った。

だけどあのネックレスをもう一度手に取った時思った。

涙の様な蒼い雫。それが堕ちて出来たのがあのドレスみたいだと。

空から堕ちた雨が母なる海に戻るように。

『空』と思っていたドレスが『海』にも思えて。なんだか不思議で、こんなこと考えるのは幼稚でメルヘンチックだと笑いながらも、楽しくなった。

このドレスも・・・・ネックレスもやっぱり私には身分不相応なのかな。

もっと綺麗な人が身につければ地味だなんて言われなかったのかな。私のせいで、そんな風に言われるなんて・・・

『よく似合います』

あれはやっぱり社交辞令?

目立ちたいわけじゃない。たくさんの人から賛美が欲しい訳じゃない。まして母や姉に褒めてほしかったわけでもない。

でも、これじゃぁ可哀そう。


何が?



可哀そう?

  

一言でいいの。言ってほしい言葉があるの。言ってほしい人がいるの。



誰に?


 


気分が悪い。そう振動は感じなかったが酔ったのだろうか。

早く着いてくれないだろうか。

少しでも気分を和らげようとリリアは窓の外の景色を眺め続けた。






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