第43話 『友』と呼びたい人
なんか無駄に長くなった!
最近良く行く様になった町の小さなカフェ。
カフェの奥にはいくつか個室もあり、恋人や女の子たちの憩いの場にもなっている。
そんな奥の個室の一つ。テーブルを挟んで一組の男女が座っている。
テーブルの上に肘を置き、祈るように両手を握る少女が徐に言葉を発した。
「ねぇ、ディオ君」
「・・・・何ですか」
「私たち友達だよね」
「・・・・今日は何ですか。お一人様2本までの大根です?それとも卵、ああ、今日は醤油の特売日でもありましたね」
ここ最近、毎度付き合わせているタイムサービスにディオは慣れ始めていた。自らスーパーのチラシを見てチェックするまでに影響は及んでおり、同じ寮に住む隊員から変な目で見られている。
「ちがーうっ!!って違うくないけど。それは後でお願いするけどさ」
うぅ、ディオ君の視線が痛い。だって、戦力は多い方がいいじゃない。
「あのさぁ、舞踏会の日にさ、一緒に妹に会ってもらえないかな?」
「リリアさんの妹さんにですか?」
ディオはまるで珍獣でも見つけたかのように目を見開いた。
「うんっ!友達としてちゃんと紹介しておきたくて!私の妹ちょっと心配性?でさぁ、昔っから、まぁ、なんやかんやとね・・・ディオ君ならしっかりしてるし、マリア様やカイン様で免疫ついてるでしょう?あの娘、昔っから私の行動にうるさくてさぁ~でも、ディオ君なら、あの娘も納得すると思うんだよね。ねぇ、お願い!堂々とディオ君やマリア様に逢いに行きたいし!!」
正直、絶世の美貌を持つあの娘が、あのドレスを身に纏い美しく着飾ったら。
あの娘は昔っから外見で人を判断する人を嫌っている。ディオ君は人の容姿を褒める様な器用なマネ(←結構失礼)できないから、あの娘も気にいるはず!でも、ディオ君に害が及びそうなときは全力で助けよう!
「免疫ですか?一体なんの?」
なんやかんやと言葉を濁した所も気になるが、免疫とはどういうことだろうか。
「ん?凶器にも匹敵する、あの美貌にだよ」
マリア様の場合は愛くるしくって、なんでも許してしまいそうになったり、ぐてんぐてんに甘やかしてしまいそうになる、あの天使の様な笑顔。あ、ちょっと泣きそうになる顔も鼻血もんだよね。出血多量で貧血、最後は息絶えそうだな。でも、あの天使の笑顔見られるなら、冥土の土産にいいか?
カイン様の場合は、あれは悪質よね!あの微笑ひとつで相手の思考を停止させられるし、判断能力もかなり低下させるわ。カイン様のあの透き通るような綺麗な緑色の眼を見ると、なんか逃げられない気持ちになるのよね。あれは危険だわ!目が合うだけで、不整脈起こして死にかける人もいそう。男女問わない感じだし、危ない階段に何人も登って、最後は奈落の下?あ、傾国の美女?下手に近付くと危険じゃない、トラブルに巻き込まれそうだし。例えるなら歩く兵器かな~カイン様って。
そう続けるリリアの言葉に、ディオは困惑していた。
マリア様は確かに可愛らしいと思うが、それは幼い子供を大人が慈しむ様な感情に似た物だと思っていた。だから多少の悪戯も我儘も黙認したし、近頃曇っていた笑顔が、何の翳もない笑顔に戻った時は心底ほっとした。幼いなりに自分の立場を理解している少女に対し、護衛対象の有無なく、守ってあげたくなる気持ちになる。
だから泣きそうな顔を見ても、この他人からしたら無表情に見える顔の下でおろおろすることはあっても、鼻血を出すことはないだろう。というか、鼻血を出す人は病気ではないだろうか。もしそうなら、感染する可能性もあるから、マリア様に近づけない様にしなくてはならない。
ああ、でも少し前に他国の皇太子が交遊目的で来ていた際、マリア様を見てかなり挙動不審になっていたな。よく面会を求めてきたし、今よりもまだ少し幼かったマリア様が疲れてはいけないからと、城の庭の歩く時は抱きあげようと何度もしていた。その際は体調でも悪かったのか、かなり息が上がっていた。マリア様もそう思ったのか、お断りをし、心配そうにその王太子の顔を見上げていたが、その時王太子が急に「うっ!」と呻き、顔を手で覆いながら、「申し訳ありません、急用を思い出してしまいました。愛しい人、また会いにきます!」と駆け足で去っていたな。その後直にアルフォード王子がマリア様の部屋を訪れ、その王太子が急遽自国に帰国したことを告げた。
もしや王太子はご病気だったのだろうか。マリア様は特に体調を崩さなかったので、もし病気だったにしても感染らなくってよかった。病気だったのならマリア様に近付かないで頂きたいものだ。次来られた際は、事前に医師に診て頂いてから面会して頂くよう、上に報告しておこう。
カイン様に対しては、彼は我が国の宰相閣下であり、自分の命の恩人の一人でもある。
逆らってはいけない相手だと本能的に感じる時もあるが、仕事も公平で尊敬もしている。自分が文官なら上司はそういう人がいい。カイン様は自分付きの侍女や部下を持っておらず、日夜侍女たちが自分をとアピールし、裏ではお茶入れなど一つに対し、揉め事さえ起こっていると聞く。
昔、少しの間カイン様の護衛、とういか交代で部屋の前に立つ衛兵の仕事に就いた時は、部屋から出てくる人が魂の抜けたような状態になっていたり、「俺、あれならありだと思う」、「あの人の、たった一人になりたい!」などと呟く文官もいた。やはり皆、尊敬できる上司の下に就きたいと思っているのだろう。そういえば、部屋で失神する人もいて救護班を呼ぶこともあった。あの人たちは仕事のしすぎで倒れたとカイン様は言っていたな。その後、倒れた人達は姿を現さなくなった。その人たちは養生のため、地方の仕事でゆっくりするようにとカイン様が言って仕事場が移ったらしい。さすがはカイン様だ。部下に対してもなんとも慈悲深い。
「ディオ君、多分君は理解していないと思うから言うけど、美しいといのは、それだけで武器になり、他人を脅かす存在になりうるの。特にその事を理解している人間は、厄介なの!それが私の妹よ!ああ、でもディオ君にはマリア様と一緒にこのまま何も知らず清らかなままでいてほしいかも・・・」
「はぁ・・・要するに妹さんにお会いして、きちんと御挨拶すればいいんですよね?でも、止めた方がいいと思います。今は騎士団に所属させて頂いていますが、元々自分は身分が低い上に、この容姿なので御家族には御逢い・・・・」
ディオは諭すようにリリアに言葉を返す。今だ貴族主義が多いこの国でリリアの行動は明らかに逸脱している。
リリアから友人となって欲しいと言われた時も驚いたが、その時は貴族であるリリアがわざわざ自分からそんな事を公にするはずがないと思っていた。だから自分が何も言わなければ特に問題ないと。相手からすれば自分は簡単に切り捨てられる側の人間だから。友人になってほしいと言われたあの一言だけで、もう充分だったから。
だと思っていたのだが、
「酷い!ひどいわ!友達になってくれるって言ったじゃない!!あの言葉は嘘だったの!?嘘つきは泥棒の始まりなのよ!詐欺罪で問われるかもなのよ!?うわ~ん、ディオ君の結婚詐欺師!地味に顔整っているくせに!この脚長!!サラサラヘアー!」
「・・・・・リリアさん、途中から可笑しいです 」
「お願いと称して無理やり友達になってって言ったから!?逢うたびにタイムサービスに付き合わせてるから!?それとも食べれる雑草や茸を獲りに行くのに馬で送ってもらったから!?笑い茸を間違えて食べさせちゃったこと!?ディオ君の図書カードを使って大量の本を借りたから!?」
「・・・・・・・・・」
ディオ君が何故か遠い目をした。
はぅっ。
「うぅ、大体、身分とか容姿とか、それ差別よ。うぅ、ディオ君が差別するぅ~人権侵害だわ。私だって人間なのにぃ~~~~~~~」
マリア様に言いつけてやる!!
「・・・・・リリアさんって本当に貴族なんですか?それに自分が言いたかったのは、リリアさんの評判に・・・・・・分かりました、分かりましたから!泣かないでください!妹さんに会いますから!」
彼は焦っている様だ。こんなに焦っている姿を見るのは初めてだな。ほとんど表情変わらないけど。うん、いい物見れたから許してあげよう。
「ほんとに?」
「ええ。きちんと御挨拶します。その・・・・・・・・友達だと。でも知りませんからね」
観念したように深いため息をついてディオは言い放つ。
「うん!ありがとう!あの娘の了解が得られたら釣りにも行こうね!タコも釣ってマリア様の3人でたこ焼きパーティーしよう!」
「・・・・轆轤回し」
「ん?」
「ストラパ工場で轆轤回し教えて下さい」
「!いいよ、行こう!!」
表情の変化に乏しく、喜怒哀楽が分かりにくい彼ではあるが、よく観察していれば何となく分かる彼の表情には、ほんのりと『喜』と『楽』が浮かんで見えた。
友情が深まった!いや、ここからがスタートなのか。
いつか2人(+マリア様)が和気あいあいとしてる所書きたいなぁ。
まぁ、まず本編完結してからだけどね!
はい、すいませんでした!