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第42話 開けてはいけない扉、トラウマへの道





2人は家の最上階、屋根裏部屋に来ていた。

そこは義父の死去、母と姉によって自室を追い払われたシルヴィアの現在の自室兼闇の実験室でもある。

屋根裏とは言っても元がそれなりに大きな屋敷である為、不自由ない広さを兼ね備えていた。



「ねぇ、なんであんたの部屋に行かなくちゃいけないの?」


衣装部屋の掃除もそこそこにし、リリアはシルヴィアに言われるまま屋根裏部屋まで来ていた。

そろそろ夕食の下ごしらえもしなくてはならない。

何よりリリアはこの部屋が苦手だ。幼少時代遊びと称して、ここで実験台の如くいろいろなことをされた記憶がトラウマとなり、根深く残っている。



「お姉さまに御見せしておきたい物がありますの」


シルヴィアは私の前方を歩きながらそう話す。

そして本棚まで足を運ぶと本を一冊取りだした。

本が何だと言うのだろうか。どこにでもありそうな、古ぼけた赤い表紙の一冊の本だ。

シルヴィアは本を開き、何かの音を発した。



『        』


呪文・・・なんだろうか。彼女が発した言葉は、私の耳には言葉として聞き取ることができなかった。そして次の瞬間にはシルヴィアが発した音がなんだったかさえ忘れていた。

それを疑問に思うこともなく、すぐに本棚が左右に開き始めた。たくさんの本が入っている本棚であるはずなのに音一つあがることはない。

左右に開いた本棚から出来た新たな空間は闇色に染まっていた。

ただ唖然とするばかりだ。

シルヴィアは唖然としている私に振り返り言い放つ。


「さぁ、お姉さま、参りましょう」



「なんなの、ここ?」


リリアは自分の眼を疑った。

シルヴィアの後に続き、闇色の中に入った瞬間、視界は一瞬で明るくなった。

視えるようになった視界で、四方を見渡すと自分がそう大きくもない部屋の中に居ることを認識した。その部屋はたくさんの物が部屋を囲んでいるようだった。

その中には素人目にも解る骨董品や古そうな本もある。


シルヴィアはそのまま衣装棚と思わしき所まで行くと、そのままその棚を開けた。

中には色鮮やかなドレスたちが入っている。



「亡くなった母の物ですわ」


「え?」


シルヴィアの亡くなった母。それはつまり彼女にとって大事な物であり、形見の品でもあるという事だろうか。

だから私たちに見つからないように、こんな所に隠したのだろうか。



「亡くなった母が、生前男性に貢いで頂いていたもので、父に見つからない様この部屋に」






は?貢いでもらった?・・・父に見つからないように?

え、聞き間違い?今、なんか、あんま聞いちゃいけないこと聞いたような・・・



「母は、社交界でも有名だったらしくて。結婚しても求婚してくるような人もいたそうですわ。だから贈り物も多くって、ああ、これなんてどっかの男爵に貢がせたティアラ。古代マライラ帝国の王女が使っていたと言われる品ですわ。これを母に贈った男爵はその後借金で自己破産したと母が笑いながら話して下さいましたわ。コレクター品が手に入るうえに、勝手に害虫がいなくなってくれると」


これは確か、呪いのミイラの右腕ですわね。ああ、これなんて昔使用していた拷問器具ですわ。

そう言う娘であるシルヴィアも笑いながら話す。



こいつのサディスティックぶりは遺伝子レベルの問題か!

お義父様、何故結婚したんですか!?やはり顔?顔ですか!?ってことは我が母も顔で選ばれただけ!?いや、もしかしてM?

なんですか、拷問器具って!そんなうっとりした、誰もが見とれる様な笑顔で、そんな物見ないでください!

私は他に何も見てませんよ!ええ!水晶玉っぽいものに入った頭蓋骨とか、ガラスケースに入った蠍みないな生物の剥製とか、変なお面とか、全然まったく見てませんよ!

わっ!なんか目が合った。干からびた人間みたいな人形と目が合った!!



リリアは1000のダメージを受けた。

もう瀕死状態に近い。

現実逃避という名の防御を行った。

50HPの回復したが、新たなトラウマが埋め込まれた。



なんて素敵なお部屋。アンティーク品(水晶やティアラ、拷問器具など)。可愛い人形たち(ミイラや剥製)、キラキラ光る宝石たち(禍々しい光を放っている)、大きくて綺麗な鏡(なんか鏡らへんからうめき声みたいなのは聞こえるが、幻聴だろう)。うふふ、ふふ。




「・・・・さま、お姉さま」



「え?何?」


シルヴィアの呼びかけになんとか意識を戻す。




「これですわ、お姉さま。これならよろしいでしょう?」



そう言いシルヴィアが見せたのは、純白のドレス。

肩が出るタイプのドレスではあるが、際どい感じのものではなく、むしろ上品さを感じる型で、細やかなレースと金色と銀色の刺繍は余計な色が入っていない分、美しさを増していた。思わず見惚れるほどのドレス。そのドレスを着こなす事ができるのは、僅かな人間だろう。いや、そのドレスはまるで、たった一人の人間の為だけに作られたドレスのよう。



「きれい・・・」


「母が作ったドレスですわ。手先が器用な人で年頃になったら着てほしいと・・・・」

憂いた表情でそのドレスを見つめるシルヴィアは亡くなった母親を思い出しているのだろうか。


サドなんて思ってスイマセン、シルヴィアのお母様!

うぅ、ええ話やぁ~ぐすんっ今日はあの娘の好きな料理を晩御飯にしてあげよう。



「『何時かこれを着て、群がる害虫どもから搾れるだけ搾って、駆除するのよ。大丈夫、このドレスには呪いが掛っているから、貴女を害する人は近寄れない様になっているわ』、と、母がわたくしにこれを贈って下さる際に言っていましたわ」





やっぱり、この親にして、この子ありって事ですね!






気のせいかな、カインも王子も全く出てきてないな!あれ?

近日中にもう1話載せます!でも、期待しないでね!!

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