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第41話 準備




穏やかな午後のひと時。

雲ひとつない晴れわたった青空。

心地よい風。






「ぬおぅ~~~~~~~~~~~!!!!!!!!??????」


そんなひと時にも関わらず、今日も奇声を発する珍獣が・・・・・・




って誰が珍獣じゃぁ!!!!



「さすがお姉さま、見事なノリツッコミですわ。でも珍獣とは・・・・ご自分のことをよく理解されてますわね。でも、あまりそのようなお声は出さない方がよろしいわ。誤って狩人の方に撃たれてしまったり、見せ物小屋に連れていかれてはいけませんもの。わたくし心配ですわ」


背後から両手をパチパチ叩きながら話しかけてくる声は鈴の音のような美しさだった。

が、しかし、言葉の内容は失礼極まりないものである。




「・・・・・ねぇ、どこから突っ込んだらいいわけ?一応私、あんたの義姉なんだけどね!?そこんとこ理解してるのかな?」



「酷いですわ、お姉さま。わたくし出会ったあの日からずっとお姉さまを慕って来ましたのに・・・・・あの日約束してくれたではありませんか、シルヴィアを守ると!

わたくし人語を操る他生物を見たのは初めてで、今でもあの時のことを思い出すと胸が高まりますわ。これならシルヴィアの従属となってくれると!!」




他生物・・・・これ・・・・・・従属・・・・・・・・

私は列記とした人間だっつのっ!くそ~あの契約さえなければもっと優位に立てるのに・・・・今に見てろ、貴様を玉の輿に乗せ私は自由を手に入れて見せるわ!



「って、今はそんなこと言ってる場合じゃない!ちょっとあんた、これどういうこと!?」


そう言ってリリアが指を指した場所には、水浸しの床と汚れた大量の布切れ。



「ああ、それはですね。先ほど実験を行っていたのですか、誤って薬品を床に零してしまいまして・・・・そのままにしておくと物質を溶解させる液体でしたので、これはいけないと思って拮抗作用のある液体をまいたんですの。そのお蔭で、床が腐敗する心配はなくなったのですが、臭いが残しまして・・・・先日お姉さまに毒ガスと罵られたでしょう?わたくし、これ以上お姉さまにひどい事を言われない様頑張ってお掃除しましたのよ?今回はほぼ無臭ですわ、褒めて下さいまし」


可愛い顔を最大限生かし、胸の前で手を握りながらの上目づかい。




「まぁ、偉いじゃない!これ以上無駄な家の修理代を出さなくてすんだ上に、ちゃんと掃除もするなんて。あんたが家の事を心配してくれた上に、掃除を進んでするなんて!私は今喜びで胸いっぱいよ!・・・・・・・とでも言うと思ったか、ボケ!!私は今怒りで胸いっぱいよ!どうして床が水浸しのままなのよ。床が痛むし、結局腐りやすくなるでしょ!だいたいなんで衣裳部屋で実験してるの。危ないからせめて自分の部屋でしなさいってあれほど言ってるでしょう!?この部屋には、もしもの為の鎮火魔法具や防御魔法具を備え付けてないのよ。それに雑巾だって、こんなに大量に使用しないの!ぼろぼろになってから新しいの使う!もったいないでしょ・・・うきゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~~~~~っ!!!!!!!!!!」


プリプリと怒りながらもリリアは部屋に入り、山住にされている雑巾と思わしき布を手にとり、後始末の為、床をそれで拭こうとした。が、手に取った布は雑巾ではなかった。っというよりも、布切でもない。れっきとしたその部屋し仕舞われていた高級ドレス。

滑らかな絹の生地、細かな刺繍に色鮮やかだったそのドレスたちは薄汚れ、本来のドレスの美しさを微塵も感じることができない有様であった。




「っ~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!??????????」


余りの出来ごとに悲鳴を上げた後は言葉にもならず、ただ元ドレスを凝視した。

こっ、この元ドレスたちはお母様やマリーお姉さまのドレスたち・・・・・もしこれが知れたら・・・・・・・いえ、この被害総額は・・・・・・




「あら衣類の中でも品がなくて、使い物にならない様な物を使ったつもりなのですが、ダメだったのかしら?その布、水の吸収が悪くって」


中々水を吸ってくれないから、思ったよりも多く雑巾を使ってしまいましたわ。

そう軽く言う言葉る力も湧いてこない。


確かに派手で露出も多くきわどいのもあったけど!私には到底着れないけどさ、でもあれ一着に幾ら掛かったか。もしマリー姉さまが着なくなれば町の古着屋に売りに行けるし、売れなくても元々の生地がいいからハンカチとかクッション縫おうと思ってたのに・・・・




「・・・・・・今日の夕飯はピーマンがメインよ」



「お姉さまの鬼」



「なんとでもお言い!取敢えずここの掃除をするわよ!掃除ついでにあんたに合いそうなドレスも探さなくっちゃ!いい加減、舞踏会の準備しないと間に合わないし」


今の我が家に、使用人やお針子を雇う余裕なんて微塵もないのよ!



「わたくし、この格好でも構いませんわよ?」



「あんたねぇ、あんたのその容姿でそんな格好で舞踏会に出てみなさいよ。明らかに悪目立ちでしょう!まぁ、王子様のお目に留まりたいなら別だけど」


まぁ、こっちとしてはそれもいいけどね。でもお母様たちも一緒に来るんだし、それなりにいい格好させないと気づかれる可能性が高いし。ばれたら面倒なことになるに決まってる。

国中の年頃の娘が対象といっても、たかが数時間の舞踏会。その中で相手を選ぶとしたら絶対に容姿で選ばれる。所詮人間など第一印象が重要だ。たかが数時間の舞踏会でその人間の本質など解りはしないわ。その点、あの娘の外見は見る者すべてを魅了するほど。

美しい少女が、美しいドレスに身を包む。一気に注目を浴び、王子やその側近あたりの人間の興味を引けるはず。ついでに王子様がこの娘に一目ぼれでもしれくれれば、更によし!

日頃、マリア様という、愛らしい天使の顔を見慣れているだけあって、そんじょそこらの器量良しさんは目じゃないはずだ!

ああ、なんて賢いのリリア!見える、見えるわ。(あの娘が)玉の輿に乗る輝かしい夢(未来)!幸せの扉はもうすぐそこね。待っていて、私の未来の旦那様!




「でも、わたくし、マリーお義姉さまのドレスは趣味ではありませんわ。胸のあたりもきつそうですし・・・・かといってお姉さまのドレスは合いませんし。胸がきつくて腰は緩いし裾部分が短いですわ」



「・・・・・・わざわざ言わなくたっていいことを!だれもそのまま着ろなんて言わないわよ。あんたに似合いそうなの選んで、手直しと少し改造しようと思って」



「あら?でも、お姉さま、家事の中で一番苦手なのは裁縫でしたわよね。御髪も結えない不器用さんですもの」



「手先が不器用なだけよ。細かすぎるの、お裁縫とかは!でも雑巾とは縫えるわ、刺繍は無理だけど」



「それでは意味がないのでは?可哀そうなお姉さま、家事に必要な能力は磨けても淑女に必要な能力は磨けなかったのですね。御労しい」



「ねぇ、マジでケンカ売ってる?しょうがないじゃない、あんたに合うドレスを買う余裕なんて家にはないの!それともあんたが毎度毎度渡してくる多額の通販の請求書払ってくれんの?だったらドレスの一着くらいこっそり仕立ててあげるわよ!」



大体、淑女の嗜みの一つと言われている刺繍わね、あんたらが好き勝手して、その後始末ばっかりしてたから、する暇がなかっただけよ!私だって練習すればできたはずなのよ!きっと!



実際には読書に明け暮れ、轆轤回しに行ったり、釣りにはまったりと、案外有意義に時間を過ごしている事もあるのだが、リリア自身が刺繍という行為にまったく興味が惹かれず、一度も自主的に手を出さなかった事は忘れ去られていた。



「酷いですわ、お姉さま。妹からお金を巻き上げようとするなんて!わたくし余りの仕打ちに涙が」



「わたしはあんたの仕打ちに涙で前が見えないくらいの心境によく陥るんだけどね、きっと言ってもわかんないよね」


泣きマネをするが如く両手で顔を覆う。


「ところでお姉さまはドレスどうなさるの?」




「今あるやつから選ぶから別に問題ないわよ。流石に今回ほどの規模の舞踏会には言ったことないけど、社交界には何回か行ってるからそれなりにあるし。幸い私の好みの服は流行ファッションっと言うよりかは、いつの時代でも誰にでも合うドレスだからね。多少古くても問題ないでしょう。」



「なら、わたくしも持っている服でかまいませんわ」



「だからぁ~その服じゃぁ悪目立ちなんだってば」



「ドレスならよろしいのでしょう?私も実は持っていますのよ」


みすぼらしい衣服を身に纏いながらも、その美しさを曇らすことのない彼女は妖艶に微笑んだ。



えっ?白衣とか魔女みたいな服とか以外に!?

あ、なんか嫌な予感がする。










話が進みませんね・・・・なんでだろ?

早く舞踏会のシーンまでいかねば。

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