第37話 悪魔との幼少時代
まさかまたここに来るなんて思いもよらなかった。
下町の裏通り『伝時屋』
本来なら関わらないような場所。
「すいませ~ん。伝時屋さん~いませんかぁ~」
以前と同様いろんな物が店の中に置かれている。
私の声に答えるように店の奥から1人の男が出てきた。
この前を同じように髭を生やした30代ぐらいの男、伝時屋の店主。
「よいよい、お嬢ちゃん。まさかまたここに来るとは思わなかったぜぇ。お望みの本は手に入ったんだろぃ?なんの用だい?」
「ちょっと探し物をね。ねぇ、ダメもとで聞くんだけど履いたら特定の場所に行きたくなる靴とか、履くだけで足が勝手に踊ってくれるような魔法の靴ってないかしら?」
「・・・・・それは魔法の靴じゃなくて呪いの靴の間違いじゃねぇか?なんだお嬢ちゃん踊れないのか?もうすぐ城で舞踏会があるってのによぅ~今町中いや国中の娘たちが興奮してドレスを用意したり踊りの練習してるぞぅ。お嬢ちゃんもこんなとこ来ずに2番通りに新しくできた人気の洋服屋にでも行けよ?今からじゃぁオーダーメードは難しくてもそれなりのは用意できるだろう。もしかしたら王子様に見染められるかもしれねぇぜぇ?」
「流行のドレスを身に纏ってお腹は膨れるの?むしろ無理に締め付けることでへっこむわね。私はねぇ、自分程度の容姿の分際で王子様の結婚、やった~玉の輿だわ!王妃よ、1番の幸せよ~うはうは~ってなるほど自意識過剰じゃないわ。自分で言うのはなんだけど自分のレベルは誰よりもわかっているわ。私は言わばモブよ、モブキャラ。ごく限られた一部の選ばれた人間を引き立てる側の人間なの。だから最初っから無駄な夢なんて見ないの。私が求めているのは山あり谷ありの人生じゃなくて可もなく不可もない平凡な人生なの」
モブ・・・・目の前の少女は気付いてないのだろうか・・・・いや気付いてないのだろう。
普通の年頃の娘はまず最初にこんな場所に来ないし、暗殺者に襲われて返り討ちにしない。(情報は入手済み)それにあいつが興味を示すような娘がモブキャラだと?ああ、言ってやりたいぜぇ。お前は普通じゃないって言ってやりてぇ。
「・・・・で、やっぱり靴はないかしら?」
「・・・・この店にはないが『ブラディー・ヒール』っていう物は存在はするぜぇ」
「『ブラディー・ヒール』?」
血の靴?
伝時屋は記憶を辿りながら話しだす。
「ああ、別名『呪いの紅い靴』であり数世紀前の実話から出来ている話だ。詳しい話は忘れたが踊ることが大好きだった少女が履いていた靴だったそうなんだが、その少女が病弱で歩くことも満足にできない身体で死ぬ間際までその靴を履いて踊っていたと言われる靴だ。その靴は何十年たっても血のように赤く色褪せることなく輝き続け、次に履く人間が死ぬまで踊らせようとする呪いの靴だとか。色褪せない靴の赤色はその少女が踊りながら吐いた血べととも言われている。その話が本当なら履いた人間は間違いなく死ぬまで踊り続けるだろうよぅ。まぁ、お勧めはできないがな」
死ぬまで踊り続ける靴ねぇ~仮に本当だとしてもあの娘なら呪いも跳ね返しそうだけど・・・・
「・・・因みにお幾らくらいかしら?」
「マニアの中じゃレア物になるだろうからなぁ~家ぐらい買えるかもしれねぇなぁ~しかも大金はたいて買っても何故か同じ店に帰ってくるって言うぜぇ~」
たっ高い!!!!しかも買っても店に帰ってくるなんてその店まる儲けじゃないっ!新手の悪徳商法!?
「・・・・くっ無念」
「だいたいなんでそんな物いるんだぁ?」
「あら、客にそう言う事聞かないのがこういう店のセオリーじゃないの?」
「まぁな。だからこれは純粋な好奇心だ」
伝時屋がニヤリと笑う。
「どうしても今度の舞踏会に妹を連れて行きたいの」
そして玉の輿を。
「妹?なんだお嬢ちゃん妹いたのかぁ。でも普通の娘なら喜んで行こうとするだろぅ?」
「そうね。普通の年頃の娘ならね」
ふっ・・・・・普通の妹ならこんな風に悩まなくてすむのだろう。
思えばあの娘が普通だったことがあっただろうか、いやない。
伝時屋も考えた。
よく考えれば嬢ちゃんの妹って言う時点で普通じゃねぇか~あはは~
「ねぇ、どうしたらいいと思う?」
正直相談できる相手がいない。頼る相手もいない。あのインドア娘を外、それも大勢の人間が集まる舞踏会に参加させるなんて不可能に近い。
「どうしたらって言ってもなぁ~妹ちゃん好きな野郎でもいるんじゃねぇの?だったら無理に行かせる必要はねぇだろう?」
「それはないわ。あの娘は年がら年中家の中に引き籠り、危険な研究を行い、あわよくば私の身体で人体実験を行おうとする危険人物よ!」
ああ、そう言えば昔あんなことがあったな。
あれはまだあのお義父様が生きていらっしゃったころ・・・・・・
「ねぇ、リリア姉さま、お外に遊びに行きましょう?」
「・・・・行きたくない」
「まぁ、リリア姉さま西の森に行きたいんですの?でもあそこは禁断の森ですから今度にしましょう?お楽しみは最後にしなくてわ。今日はノルクオンの丘で次の実験で使う薬草を取りに行きましょう。それとも丘の上からバンジージャンプをなさいます?藁で作ったロープでやるのでスリル満点ですわ」
お楽しみってなんだ、お楽しみって!っていうか行きたいなんて一言も言ってないし!バンジーだってどうせ私にさせて高みの見物でしょ!!言ってやりたい。そして逃げたい。でもシルヴィアを守るという契約書にサインをしてしまったため、あまり傍を離れることも出来ず、お願い(命令)にも逆らえない。あまりに激しく拒否すると全身に電流が流れる感じがするのだ。一瞬のことだけど結構痛い。
「ねぇ、たまには他の子たちと遊ぼう?」
一応妹の今後の為にも一言言ってみたりもした。
「嫌ですわ。他の子たちはリリア姉さまと違って、つまらないんですもの」
「でっでもこの前一緒に遊んだ可愛い子、え~と名前なんだったけ?まぁ、それはいいとして、シルヴィアともう一度会いたいって言ってたじゃない。シルヴィアは元々あの子とお友達なんでしょ?」
「あれは弱いくせに毎回毎回私に勝負を挑んでくる愚か者ですわ。お友達でもありません。」
いや、あの勝負?はどう考えてもあんたが卑怯かつ鬼畜な手で相手をぼろぼろにしてただろう?物凄い笑顔で・・・・・
「それにリリア姉さま、どんなに可愛く見えてもあの子男の子ですわよ?男なんて生き物はろくでもなく浅はかで単純、人の外見しか見えない知能の低い生物ですわ。それに汚いし。リリア姉さまご存知?男は歳をとると悪臭を放つんですわよ。その悪臭の原因は身体の脂肪が溶けて腐っていく臭いらしいですわ。リリア姉さま、そんな生物と一緒にいたいんですの?」
「・・・・・身体が溶けちゃうの?いっ・・・生きてるのに?・・・・やだ・・・怖い・・・」
私はシンデレラの言葉を信じ恐怖した。せっかく出来た優しいお義父様も溶けてしまうのだろうか。
「そうですわ。怖い生物です。近寄ってはいけませんわ。だから2人で遊びましょう?」
「・・・・うん。・・・・でもバンジーはイヤ」
今思えばなんで信じてしまったのだろう。自分より歳若い義妹の言葉を私は本気で信じ男の子もとい他の貴族の子供たちとも遊ばなくなった。そして極めつけにお義父様にしたこと。
「お義父様、これ差し上げます」
「わぁ、ありがとう。なんだいこれは?」
せっかく出来たお義父様が腐ってしまっては大変だ。リリアは悩みに悩み、考えた末・・・・
「防腐剤です!」
「・・・・防腐剤」
「はい!腐っちゃ大変だから寝る時も持ってて下さいね!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。・・・・・・・・・・・・ありがとう、リリアちゃん。・・・・・・・・・・・・とっても・・・・・嬉しいよ」
お礼を言うお義父様の顔は泣くのを堪えているかのような表情をしていた。
それをシンデレラに言うとシンデレラはお腹を抱え震えながら笑っていた。目に涙を浮かべながら。
少し経ってから中年ぐらいの歳になると確かに加齢臭というものが出て悪臭を出すが個人差があることを知った。特に脂ぎった太いおじさんが要注意らしい。お義父様はやせ形だった。が、すでに時遅し。私はあの悪魔にまた騙され、一時的に他人との接触が怖くなり友達を作る機会を失ってしまった。
ああ、思い出すだけで涙がでそうになる。なんて可哀そうな幼少時代の私!
思えばあの子は自分のテリトリーに他人が入ってくるのを嫌う節がある。
「・・・・・い。お~い。回想するのはいいがそろそろ戻って来てくれやぁ。おじさん置いてきぼりでさびしいぃ~~~~」
「・・・・なんか気持ち悪い」
不貞腐れた感じに伝時屋が言う。正直髭をぼうぼうに生やしたおじさんがそんな顔しても可愛くもなんともない。
「・・・・人がせっかくいいアイディア思いついたってのによぅ~別に知りたくなければいいんがけどなぁ~」
「えっ嘘!?ホント!?」
「ああ。あくまで一つの手としてだがな。聞きてぇか?」
「是非っ!!!!」
伝時屋はにやりと笑い言葉を続けた。
「それわなぁ~・・・・・・・・・・」
更新遅くなって申し訳ありません。
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