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第34話 シスコン

夜も深けた時刻、広い部屋の中に1人の男がいた。男は机に向かい黙々と書類に目を通していた。


コンコン


「・・・・・なんだ」

戸を叩く音が静かな部屋に響く。同時に外から声がした。



「職務中失礼致します。第一王女就き護衛官ディオ=エンドランドです」


無機質な声でそうディオ=エンドランドは言った。

中から入れと命じられてから部屋に入る。部屋の中には中央の椅子に座っているこの部屋の主と2人の護衛官が入口で待機していた。

部屋の主は目線だけ向け冷たい音色で命令する。



「・・・・ディオと2人で話す。他は下がれ」


部屋の主はそう言うと同時に部屋にいた2人の護衛官は一礼をして部屋から出て行く。完全に部屋から2人以外の気配がなくなったのを確認し、男は再び言葉を発した。



「ふぅ~~~まったく堪ったもんじゃないよ」



「・・・・よろしかったのですか、護衛官を下がらせて」


「いいよ、いいよ。だってあの護衛官、名ばかりのあいつが寄こした監視だからね。サボリ防止の。それに自分の身ぐらい自分で守るさ」


「しかし先日の件もありますし、十分に用心した方がご自身の為かと」


「何か起こるとしたら次は舞踏会だろう。この前の一件であちら側も下手に動けない。あいつもそうわ解ってる・・・・マリアを危険な目に合わせたんだ。次は完全に潰すさ。そのために舞踏会なんて下らないもの許可したんだから。で、ディオお前の用事は?」


そう発する顔は怒りに満ちていることが解る。


「はい。その舞踏会の件でマリア様がお会いしたいとのことです。自室でまだ眠らず待っていらっしゃいます」



「なっまだ起きてるだと!もう夜の11時だぞ。マリアはまだ6歳の育ちざかりなのに夜更かししてっ、それに睡眠不足でマリアの玉のような肌に悪影響を及ぼすかもしれんだろ。ディオ、なんで寝かしつけてないんだ。侍女も何をしている!!」



「・・・恐れながら、マリア様は多忙の身の殿下の職務を邪魔するのは申し訳ないとおっしゃりまして。殿下の職務が終わられるのを待って御逢いする予定ではあったのです。しかしもう流石にマリア様も睡魔と闘いきれないようなので僭越ながら自分が殿下にお伝えに上がったまでです」





「なんていじらしい!我が妹はなんて兄思いの優しい子なんだ。ディオ、お前もそう思うだろう?これは急いで会いに行かなくては!職務なんぞ2の次3の次だ!!」


そう言うと部屋の主、フェニスタリア王国第一王子アルフォード=ロデルバ=フェニスタリアは部屋を駆け足で出て行った。



さっきまでのシリアス雰囲気と威厳はどこに行ったのか・・・・






ディオはアルフォード王子の後を追うため部屋の火を消し部屋を出ようとした。


「・・・まったく、あのシスコンはまた職務を放置して」


「・・・宰相閣下。いらしてたんですか」


「ええ、今しがた。部屋にかけている術(アルフォード脱走探知機・・・特定の人物が部屋の外に出れば解る術)が作動したので来てみれば、案の定マリア様がらみとは」


気付けば扉にもたれ、腕を組んでいるカインがいた。月だけが照らす薄明かりの場所でも眉間にしわが寄っているのが解る。



「申し訳ありません」


「いえ、君が悪いわけではありません。どうせマリア様の作戦でしょう?」




まったくもってその通りだ。実の所例の舞踏会の件でマリア様がアルフォード殿下にお願いするために自分はすぐに殿下にその旨を伝え、明日の朝にでもと思っていた。しかし・・・

駄目よ。お兄様に一層お願いを聞いてもらえるよう演出しなくてわ!そうね~お兄様最近お仕事が忙しくて連日徹夜をなさっているはずね。ここ数日朝しか御逢いできないし・・・

マリアが起きててお兄様の仕事が終わるのを待ってお願いしたら効果あるかしら?お夕食も食べず待っていた方がいかしら?リリアと食べたたこ焼きでお腹いっぱいだし。それにふわふわの『わたがし』もあるもの。侍女には食事はいらないって伝えて・・・・あ、でも起きてられるかなぁ~今のうちにお昼寝しといた方がいいかしら?うん、そうしましょう。ディオ、私今から少し眠るわ。ちゃんと起こしてよね、この話は2人だけの秘密よ。



マリア様にその話を持ちかけられた数時間前。絶対服従を誓っているこの身では君主を裏切ることはできない。とは言え食事も摂らないなどとマリア様が言ってしまったため(本当は結構お腹いっぱい)周りの人間が心配して早くアルフォード殿下を連れて来てくれと自分に頼む始末・・・・結局眠りの世界にいたマリア様をギリギリの時間で起こしてここまでやってきたのだ。マリア様を溺愛しているアルフォード殿下はまったくその思惑を気付かなかったようだが・・・・・



「殿下にはマリア様とのお話が終わり次第職務に戻って頂けるようにします。すいません、殿下の後を追わなくてはならないので失礼します」



「ええ、お願いします。ああ、それと後で紹介したい人が居るので仕事が終わったら私の部屋まで来て頂けますか?」



「?はい、わかりました」


ディオの返事を聞くとそのままカインは闇に溶け込む様に姿を消した。

まるで悪役のような登場と消え方だな・・・・そう心の中で思いながら・・・あくまで心の中で。

ディオも王子の後を追うべく部屋を後にした。


策略家なマリア様をお届けしました。

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