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第33話 天使



「リリアっ!!」


小鳥のような声、笑顔でこちらに向かってくる姿はもう天使といっていいほど可愛い。


「マリア様!」

すぐには私の傍まで来て思いっきり抱きついてきたマリア様は嬉しそうに話しかけてくれる。


「ほんとに来てくれた!会いたかったのよ、ずっと待ってたんだから!!」

上目づかいでそんなこと言われたら・・・・ああ、私の性別が男だったなら完全に今のでノックアクトだ。可愛いなんてもんじゃない。くっシンデレラを見た後にマリア様を見たらもう・・・あ、やばい涙が・・・・・



「ふふ、ありがとうございます。私もお会いできる日を楽しみにしておりました」


私はマリア様に目線を合わせる為に腰を折り言葉を返した。

今私はなんとも凄いことにお城の中にいる。しかも王女私室だ。今までの私なら想像もできなかっただろう。まぁ、正式に王家に招待された訳ではないからこっそりとだけど・・・・だって貧乏貴族の次女が王女と普通に会うなんてできないし、もし入れてもそれが他人に知られるのは厄介だ。一番姉に知られたくない・・・・

私は平和が好きなんだ。だから私のことを知っているのはマリア様とディオ君を含む一部の騎士団の人達、そして・・・・・・カイン様。



「・・・・・ア、リリアっ!」



「っはい!」


「?どうしたの、リリア?」


「なんでもありませんよ。ちょっと考え事してしまって・・・あっマリア様、はいこれ!」


「?なぁに?」

私はマリア様に小さな長方形の箱を差し出した。私が持っている分には結して大きくない箱ではあるが幼いマリア様が持つと結構な大きさに見える。不思議そうに箱を眺めるマリア様に私は開けてのお楽しみです。と言い小さな手で箱を開けるよう促した。

マリア様は訳も解らぬまま箱を開ける。そして・・・・



「わぁっ!!!リリア、これ!あの時の!?」


「はい。マリア様が一生懸命作ったコップ(湯飲み)です。今日出来上がったばかりなんですよ。少しでも早く渡したくって。どうです、綺麗にできているでしょう?」


「うん・・・・・うんっ。っっっっっっ凄く綺麗!!凄い、本当に?わぁ、マリアが描いた絵もちゃんとあるっ!」


「ふふ、よかった。マリア様の最高傑作ですもの。工場の職人さんも上手って褒めてくれましたもの」


「うんっ!」

職人さんに褒められた時、マリア様は本当にうれしそうだった。やっぱり子供は笑顔が一番よね。


「ねぇ、リリアやディオのはあるの?」



「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」


マリア様の純粋な疑問に私と密かに部屋の隅で身を潜めていた(護衛)ディオ君は固まった。


「・・・・あるにはあるんですけど・・・」

私のはいいがディオ君の作品はお世辞にも上手いと言えない・・・・ディオ君も今は顔には出してないが最初一緒に工場に物をとりに行った時自分の物を見てなんか沈んでいた。気がする・・・まぁ、初心者には難易度が高いし仕方ないんだけど、見せたくないかも・・・・


「実は私、人にプレゼントするので今はお見せできないんです」


私はとっさに答えた。


「プレゼント?」


「ええ、お世話になっている人に贈ろうかと・・・・・」


「私も日ごろの感謝を籠めて渡そうかと思いまして」

ディオ君も話に乗ってきた。よっぽど見せたくないとみえる。


「そっか~残念。リリア、誰にあげるの?」



「・・・いや・・・あの、その・・・」

渡そうかなって思っている人はいるけどその人の名前なんて下手に言えない。相手に喜んでもらえるかも解らないし、ましてその相手に今日会えるかなんて絶望的だ。



「あ、リリアさん、そう言えば招待状の件・・・・・」

意外にもディオ君が話題を変えてくれた。


「招待状?」

マリア様が不思議そうに聞き直す。



「はい、リリアさんの妹君が招待状を無くしてしまったらしいんです。妹君を舞踏会に連れて行きたいリリアさんがそのことで悩んでいまして・・・・妹君が行けないのに自分が行くのはと・・・・」


ディオ君、話題変えてくれたのはいいけど今その話しないで。古傷に塩塗らないで!今はマリア様に癒されたいのよ。少しの間でも臭いものに蓋して考えたくないのよ!

ってか話が美化される!美化されすぎだよ、ディオ君!!



「んーじゃぁ、もう一回招待状を渡せばいいのよね?簡単じゃない」


いやぁ、渡してもらえるんならね?流石に無理でしょって簡単!?


「・・・・マリア様?今・・・・」

マリア様の言葉の意味が解らず思わず聞き返す。

「招待状があればいいんでしょ?もう一回作ればいいのよ」

そう笑顔で答えるマリア様。


作る?招待状を?もう一回?





えっ????????????どういうこと!?



「マリア、お兄様の直接お願いしてあげる!お兄様がいいっていったら招待状の一つや二つ簡単に手に入るわ。大丈夫、お兄様舞踏会は嫌がってたけどマリアにはとっても甘いのよ。安心して」



「でも、そんなこと・・・・・マリア様、お気持ちだけで十分ですわ」

いくらなんでもそんなことお願いできない。そんなこと言って下手に目を付けられるのも嫌だし、何よりマリア様を利用したことになる。この幼い王女には誠実でいたいと思う。あの日初めて会った日に両手を握りしめながら答える姿を見てそう思った。



「いやっ!だって無いとリリア来ないんでしょう?そんなの絶対いやっ!それともリリア、マリアのこと嫌いなの?」


美少女(幼女)+上目づかい+涙目・・・・っく、美形慣れしている(主に妹、最近はカイン様も)私でもキツイっ!!ぎゅって抱きしめたい!ほっぺぐりぐりしたい!!


「まさかっ!マリア様のことは大好きです!でも私、マリア様にこんなことお願いするために今日来たわけじゃないんですよ?マリア様に会いたくて来たんですよ?」





「・・・・大好き・・・・・マリアに会いに来た・・・・・・

マリアもリリア大好き!!」


マリア様がまた抱きついて来て力一杯答えてくれた。

私も背中に手を回して抱きしめ返す。


「でもね、リリア、やっぱりマリアお兄様にお願いするわ。リリアのためじゃなくてマリアのためにするのよ?だから・・・・舞踏会に来て?」



「・・・・・・わかりました。でわ、お願いします。マリア様、本当にありがとうございます」

結局私は折れた。マリア様には頭が上がらない・・・・


「よかったですね、リリアさん」

ディオ君、もしかしてわざと話ふってくれたのかな・・・・まさかね・・・・



「あ、大変!もう一つ忘れてた。はい、マリア様、ご所望のたこ焼きです。少し冷めてしまったけど美味しいと思いますよ」


「うわぁ、たこ焼き!!やった~ずっと食べたかったの」

マリア様の目はキラキラと光っていた。


「ディオ君も一緒に食べよう、ちゃんと3つ買って来てるから」


「・・・・・しかし職務中ですし・・・・」

そう言いつつその目は欲しがっているな、ディオ君。顔に出してないつもりだろうが目が輝いておりますよ?まったく真面目というか頑固というか・・・・


「もう、ディオったら!命令です、一緒に食べなさい」


マリア様はが頬を膨らませてちょっと怒った感じで言う。


「・・・・・わかりました。頂きます」


そう言って3人でテーブルに着き、たこ焼きを食べながら楽しいお喋りを3人で始めた。







  

ちなみにこの後もう一つ約束していた『綿菓子』を出し、興奮するマリア様に原材料が飴であることを説明すると

「えっ!?アメ?アメってあのケーキとかの上に乗っているやつのこと??」

と驚かれ、少し悲しくなった。

だって飴細工なんて庶民派の私は普段お目にかかれないんだもん・・・・






最近では庶民の洋菓子店でも飴細工の乗ったケーキを売っている所もあるがその洋菓子店すらあまり行かないリリアはそんなこと知るはずもなかった。







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