第28話 おくさん
『おくさん』=『奥さん』
『奥さんになる相手』=『結婚相手』
『結婚相手』=『舞踏会』?
「どうせ数日後には知れ渡る情報だろ。ディオ説明してやれ」
「我が国の第一王子であり、マリア様の兄上でもあられますアルフォード様は今年19歳になられるのですがまだ伴侶となるお方が決まっていらっしゃいません。そのため伴侶となる方を見つけるべく、国中の年頃の女性を対象にした舞踏会が開催されるのです。近いうちにすべての町にこの情報が流れ、リリアさんの家にも舞踏会の招待状が届くと思います」
ディオ君が丁寧に説明をしてくれた。
「・・・・王子様の結婚相手を探すための舞踏会?」
「はい」
「うん」
ディオ君とマリア様が同時に肯定の言葉で答えた。
・・・・今凄い話を聞いた気がする。王族って普通婚約者とかいるんじゃないの?
「アルフォード王子は少々女性嫌いな面がありまして今までの縁談を全て断っておいででした。しかし、仮にも一国の王子。ゆくゆくはこの国の王になり、お世継ぎを作って頂ければならない身。事態を重くみた国王たちにより今回の舞踏会が開催されるのです。」
カイン様が付け足しのように私の心の疑問に答えてくれた。
「ねぇ、リリアも来るでしょう?あ、リリアが兄さまの『おくさん』になればもっと遊べる?」
「いや、私は・・・・・・・・」
いやいやどう考えても国中の娘が集まるのに私なんぞが王子様のお眼鏡に叶うはずないではないか。というか国中ってどんだけの人数だよ。城に入りきらないだろう、絶対。ドレスとか持ってない娘とかどうすんだよ。舞踏会を何日もやったりドレスの貸し出しとかもしてくれるのかしら?いやいや、それはかなりの出費になるぞ。そんなことで国家予算・・・私の血税が使われるのはいささか許しがたいな。
「・・・・リリア、来ないの?リリアはもう『おくさん』いるの?」
話の途中で考え込んでしまったため話がずれてきた気がする。マリア様がまた眼に涙を浮かべ上目づかい攻撃をしてきた。
「・・・マリア様、私に『おくさん』はいませんし、それに男性に対しては『おくさん』であってますが、女性に対しては『旦那さま』です。」
「『だんなさま』?リリア、『だんなさま』はいる?」
「・・・・いませんね。」
・・・・残念ながら『旦那さま』になる予定の人もいない。
「じゃぁ、来るよね!!」
一緒に遊べるよね。そうはしゃぎだしたマリア様に『面倒くさそうだし、時間のムダだろうから行かない』なんて言えるはずもない。
ディオ君もマリア様に向かって良かったですね、マリア様。リリア様が来られたらすぐにマリア様のところにお連れできるように配慮しておきましょう。
ってディオ君、君そんなに強引だったかい!?どんだけマリア様命なんだよ!!くそいい笑顔だな!
・・・・いや、まてよ。国中の娘ってことはシンデレラも対象じゃないか・・・
これはまさかの玉の輿チャンス!あの美貌を持ってすれば例え王子であろうといけるはず。
それに王族ともなればあ奴めが多少の散財をしても痛くも痒くもないはずだ。王子が気にいってくれれば例えあの物ぐさが嫌がっても拒否権などない。まさに絶好のチャンスではないか。
神様、これはいつも頑張ってる私にチャンスをくれたんですね!ご褒美ですよね!!
「ええ、マリア様必ず舞踏会には行きますよ。」
私はマリア様に笑顔で答える。シンデレラ追い出し作戦のために・・・・
私は気付かなかった。
そうマリア様と話している姿を、あの綺麗な緑の瞳がずっと何かを考えるように見ていたなんて