第27話 妹
ショーが終わるころには太陽がだいぶ傾き夕刻を知らせていた。
私たちはそのまま最初の店『ルノアール』に戻る。
「もっと町にいたいな・・・・」
マリア様が小さな声で呟く。しかしそれ以上は何も言わないし、我儘も言わず大人しかった。
ただ、私の手を握る小さな手は朝よりも強い力で握られていた。
「・・・・お疲れ様です。今日はありがとうございました。」
「いえ、私も楽しませて頂きましたから・・・・」
朝と同じ部屋に入ると先に部屋に戻っていたカイン様から労いの言葉を受けた。他の騎士の人たちも数名戻っている。
・・・・なぜか騎士の人たちからの視線を感じるのは気のせいだろうか。
帰ってきてもマリア様は私の手を握りしめたまま俯いていた。
「姫さん、今日は楽しかったか?」
マッチョ隊長がマリア様に話しかける。
「・・・・うん」
「よかったな。んじゃぁ、ちゃんとお礼言って、さよならしねぇとな?」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・マリア様」
俯いたまま何も言わなくなったマリア様との目線を合わせるため私は手を握ったまましゃがみこんだ。
顔を覗きこむと大きな瞳から今にも大粒の涙が零れ落ちそうだった。
その姿がとても愛おしくなって思わずマリア様を抱き締めてしまう。
「・・・・・りっリリアっがほ・・・との・・にっつ・・・・」
マリア様はすぐに抱きしめ返してくれた。そのまま泣き出し一生懸命喋ろうとする。
私は抱きしめたまま、一方の手を少しずらして背中を擦りながら言葉を待つ。
「・・・・リっ・・リア・・がっホントの姉さまだったら・・・よかったのに・・・」
そしたらずっと一緒に居てくれるのに・・・・
私は思わず抱きしめる力を強めた。
「・・・・マリア様、今日作ったコップね、焼くのに時間がかかるから今日中には持って帰れないんです。だから出来上がったら渡しに会いに行ってもいいですか?」
「っ・・・・うん。」
「よかった。じゃぁ、今度は綿菓子を買っていくので一緒に食べましょう?」
「・・・・わたがし??」
マリア様は少しずつ落ち着きはじめ、私の言葉に反応する。
「ええ、空に浮かんでいる雲みたいな形のお菓子ですよ。ふわふわしててとっても甘いんです」
「くも・・・あまい?・・・食べてみたい」
「ふふっじゃぁ必ず持って行きましょう」
マリア様から少し元気が戻ってきて思わず笑みがこぼれる。
「・・・・たこ焼き・・・・も・・・食べたい・・・」
「ふふ、気に入りましたね?でもいっぺんに全部食べるとお腹壊しちゃうかもしれませんよ?」
「大丈夫!」
「わかりました。わたがしとたこ焼き、必ず持っていきます」
「うんっ!約束ね!!その時は今日みたいにまた遊んでね!」
「はい、約束です」
私たちは最後に指切りをした。
マリア様の顔にもう涙はない。
「でも、本当にリリアが姉さまだったらいいのに・・・」
「ふふっ私もマリア様だったらもう一人妹増えてもうれしいと思いますよ」
「リリア妹いるの?いいなぁ、マリアもなりたい・・・・・ねぇ、どんな人?かわいい?」
・・・・どんな人?・・・・人と言うよりか人の皮を被った悪魔なのか?顔は上の上、いや特上だよね。うん。マリア様も美少女だけどマリア様がアウトドア派ならあの娘は完璧なインドア派だろうな。ある意味ヒッキー(引き籠り)に近い。滅多に家の外には出ないし通販で怪しいものばかり買って人に多額の請求書を渡す。しかもクーリングオフができないものばかり!料理をすれば毒になるし、人が作るとやたら注文が多い。洗濯したら服が破れる。掃除をすると物を壊すし、冬は寒いと言って人の布団を奪う。人が借りてきた本を危険物Xにするし・・・・
「・・・・そうですねぇ~身内の私が言うのもなんですけどとってもかわいい容姿をしてるんですよ」
あくまで容姿のみで答えた。嘘は言ってない。
「いくつ?」
「もうすぐ16歳になります」
「・・・・じゃぁ、リリアもリリアの妹も今度あるお城の舞踏会は来る?」
「・・・・舞踏会ですか?」
お城で近々舞踏会があるのかしら。でも誕生祭でも国立式も時期ではないし。隣国の王族が来るなんてうわさも聞いていない。
「うん。あのね、兄さまのね、『おくさん』を探すんだって」
「へ?」
・・・・・おくさん?
「・・・・マリア様、正しくは『おくさんになる相手』もしくは『結婚相手』です。」
ディオ君が小さな声で訂正をしてくれた。
更新遅い上に話がなかなか進まずすいません。
これでも最後までやり遂げるつもりです・・・頑張って。