第22話 監視という名の外野
「ああ~いいなぁ~うまそうだなぁ~」
「うるさいですよ。静かにできないんですか」
少し離れた場所でカインとマルク、数人の隊員たちがばらばらに3人を監視していた。
「だってあいつら楽しそうだぜ?俺も轆轤回ししてみたいぃ~たこ焼き食べたいぃ~!!」
「仕事が終わったら勝手に一人で行ってください」
「けっ、冷てえやつ。なんでディオは両手に花なのに、俺の周りにはむさっ苦しい野郎どもと腹黒しかいねぇの?俺可哀そうじゃね?」
・・・・・・・
マルクが言ったその言葉を聞いた隊員たちは同じことを思った。
お前みたいな上司を持つ俺らの方が可哀そうじゃね?
「・・・にしてもあのお嬢ちゃん、すげぇなぁ~姫さんエライ懐いてるし、あのディオがおされぎみだぜ?マジでおもしれぇ~」
カインにとって今日のことはいい意味での予期せぬことだった。最近のマリア様は沈みがちだった。おかげでシスコンのあの馬鹿が仕事をせず、かなりの迷惑を被った。町に行くだけでも気分が晴れるかと思ったが、予想以上のようだ。やはり彼女はおもしろい。
後は害虫駆除のみ・・・・
『伝耳屋』の情報では最近反王族派のやつらが裏稼業の人間と下町で密会をしていたらしい。しかも相手は裏では結構名の知れた暗殺者だ。恐らく広場で何らかの接触をするはずだ。ここは穏便に済ませたいが・・・
『・・・着ぐるみを着た人間が接近中』
通信機からディオの声が聞こえてきた。さすがのマルクも真剣な表情になり、状況確認を行う。
『着ぐるみだぁ?なんか今日あるのか?』
『はい。町で旅芸人によるショーがあるようで宣伝のようです。現時点での危険行動は見られません。マリア様がショーを見たいとのことです。このままショーの行われる場所に向かいます』
『気―つけろよ。他の奴を先回りさせる』
『はい』
マルクがそう言うとすぐに2人の部下が姿を消した。腐っても騎士団。仕事は早い。
ショーがあるという場所に向かうマリア様の姿はとても楽しそうだ。そのマリア様を見ている彼女は温かく、優しい微笑を浮かべていた。
その微笑を正面から見たい・・・なぜかその時カインはそう思った。