第19話 王女の気持ち
私はマリア様が何をしたくて町を見たいのかが変わらなかった。ただ見るだけならカイン様もわざわざ私に依頼などしなかったはず。
「何を知りたい。ですか。・・・・私は・・・私は城じゃない世界が見たい」
答えるときにドレスの裾を両手で掴んで言葉を絞り出すかのように、ゆっくりと答えた。
城じゃない世界・・・城での生活はマリア様にとってはすべてなんだろう。あの大きな城、でも小さな世界で彼女は生きてきた。だから町という外の世界を知りたいのだろうか。
そう思うと小さなあの王女がとても可愛らしくて、守ってあげたくなる気分になる。
10年前、シンデレラと初めて出会ったときにそう思ったように。
「わかりました。私なりの方法で精一杯町をご案内させてい頂きます。
楽しい思い出いっぱい作りましょうね」
私はマリア様に笑いかけながら答えた。
「っうん!!」
マリア様は私の言葉に一瞬呆けた後、大きな目を見開いて答えた。
そう答えたその顔は夢いっぱいな他の子供たちと同じように輝いてみえた。
「でわ、当初に予定していた観光ルートを変更させて頂きたいのですが、カイン様よろしいでしょうか?」
私はカインに向き直って言った。
「わかりました」
カインは少し考え、答えた。その顔に迷いはなさそうに見える。
「わたしは反対です」
誰かがカインの言葉の後すぐに言葉を発した。そりゃぁ、反対する奴もいるだろう。危険度も上がる。けど、私は後に引く気はない。そう思い、反対意見の声の主を見た。
以外?にも隊長とかではなく、あの無表情少年ディオ君だった。
「危険度が高すぎます。当初の予定通りの場所ならともかく、なにかあった場合に対応が遅れる危険があります。」
ディオ君ははっきりと答えた。心なしか怒っているようにも見える。うぅ、正論だな。
「ディオ・・・」
マリア様がディオ君の名前を小さくつぶやく。マリア様も危ないことは分かっているのだろう。
「んまぁ、そうなんだがな~」
筋肉マッチョこと隊長が困ったように頭をかきながら言う。
マリア様はそれでも予定通りの観光ルートでいいとは言わない。それならば・・・・
「でわ、あなたが一緒に付いて来て下さい」
私はディオ君に向かってそう答えた。
「仮に何かあった場合、あなたが近くにいれば対応が遅れることなないでしょう?マリア様もそれならよろしいでしょうか?」
「・・・ええ、わたしはそれがいいわ。・・・ディオ、お願い」
マリア様はディオ君のそばに寄って答えた。美少女(幼女)+上目づかいだ。これで落ちないのはなかなかいないだろう。
「・・・・わかりました」
ディオ君はしぶしぶと答えた。無表情だと思っていたがよく見たら違うのかもしれない。マリア様が笑顔満天でお礼を言うと、少し笑っている気がした。
「で、結局どこに行く予定なんだ?」
隊長はどこに行くのかが気になるようだ。
「はい、まずは『ストラパ工場』へ行こうと思います」
私のその言葉にまた部屋の中の空気が凍った。