第15話 楽しい時間と牛以下の男
お茶を飲んだ後は昼時であることもあってそのままそこで昼食をとった。ごはんもすっごく美味しくって、それがまた顔に出たみたいで笑われたけど美味しいから仕方がない。食事中もいろんな話をした。以外にも話は弾んで最後の方には素で会話をしてしまった。
「城や他のパーティーにはあまり参加されないのですか?」
「ええ。あまり派手な場所は好きではないんです。ほら、ああ言う場所ってみんな意地の張り合いだったり、獲物を狙っている眼とか怖くって。」
たまに行くパーティーではみんな自分を着飾って自分が上だと主張したり、イイ男の目に止まろうと必死な感じだ。そりゃぁ、自分で相手を見つけようと頑張ることはいいことだ。けどあのテンションに自分はついていけそうにない。ちなみに私はいつも姉の引き立て役だからあまりいい思い出もない。
「ああ、確かに。」
カインはなぜか納得した感じで返事をする。城勤めだと役人も立場がいいから大変なのかしら。第一この顔じゃぁ相手がほっとかないか。でも一度も噂を聞いたことないな。もしかして貴族ではないのかしら。最初に会った時も爵位を名乗らなかったし・・・城の役人は実力主義だと聞くし。
実際はカインがリリアと同様に面倒であまり表に顔を出さないためである。城勤めやそれなりの高位の貴族でなければあまり知られてはいない。
「でも、城の料理は美味しいから好きですよ。」
リリアは本心で答えた。他のとこも美味しかったけどやっぱり城のは一段と違った。特にローストビーフ!パーティでは定番だけどあそこのは何か違ってた!どうやって調理してるんだろう。食べた時の記憶が甦る。そして思い出した。
「ああーーー!牛君!!すいません!今日は大事な用事があるんです。申し訳ないのですが今日はこれで。1週間後またここでよろしいんですよね?」
どうせ打ち合わせは済んでいる。後は1週間後の本番だけだ。今はスーパーンお特売に行くことが先決である。
「そうですね。もうこんな時間ですし。」
カインはそう言い、部屋のドアを開けてくれる。そのまま店を出るまでエスコートをしてくれた。
店を出る時セバスチャン(仮)が現れてカインに何かを渡した。可愛いピンクの袋に入った小さな袋だ。
「これ今日飲んだカモミールティーの茶葉です。よかったら頂いてもらえますか。」
そう言い私に袋を手渡す。
「いいんですか?」
「えぇ、とても気に入ってもらえたようですし、今日はとても楽しい時間を過ごせたので、そのお礼も兼ねて。」
「ありがとうございます。大切に使わしてもらいます。」
実はこの後お店で買おうか悩んでいたところだ。うれしくって笑顔で礼を言う。
「いえ、喜んで頂けてよかった。でわ、1週間後にまた。」
「はい。では失礼します。」
リリアはカインとセバスチャン(仮)に別れをいい店を出た。
「・・・・牛に負けたか。」
「はっ?」
カインはリリアの姿が見えなくなるとひとり言のようにつぶやいた。セバスチャン(仮)は思わず聞き返してしまう。
「モゼフ。今日私はステーキ牛500gで500セルの特売品に負けたんだ。」
「・・・・・・・・・・」
セバスチャン(仮)・・・モゼフは考えた。うちの主人は500セル以下の価値なのか、彼女にとっては。今までこんな事があったろうか。いや、ない!いつも主人は女性を虜にしてしまう。なのに・・・なんというか彼女は今までの女性をは違うようだ。でもまぁ、カイン様も喜んでいるようだしいいとしますか。あんなに女性に興味を持つのは私が知る限り初めての事だ。
モゼフは今だに彼女が出て行った方向を眺めながら笑っている主人を見てそう思った。