第12話 ある意味密会
結局あのネズミはチュウ吉と名付けて飼うことにした。知能が発達した影響か指示に従って細かいところの掃除をしてくれる。
『たちゅけてくれたおれぇにおてちゅだいしゅるでチュゥ(助けてくれたお礼にお手伝いするでチュウ)』
若干聞き取りにくいがよく見ていれば愛嬌もわいてくる。
お母様たちは今日もお出かけのようね。今日はオペラかしら、それともお茶会?まぁ、私にはどっちでもいいけど。
朝は基本的にシンデレラが食事の用意をする。まぁ、パンと後は昨夜のうちに用意して置いたスープと簡単なおかずのみだ。これくらいは普通にできる。ちなみに私はこの家で誰よりも一番遅く起きる。だって起きれないんだもの。夢の中のほうが幸せだもの!!
「よし、じゃぁ私も出掛けてくるわ。」
ある程度の家事を終わらせ、昨日の約束のため出掛ける準備をする。
「お姉さま、お買いものに行くには早くないですの?」
シンデレラが疑問に思ったのか話しかける。確かにいつも出掛ける時間よりかなり早い。でも例の件は極秘だ。王女が町に降りる噂が出ては面倒になるだろう。たとえ相手がシンデレラだろうと他言無言だ。
「ええ、昨日の本の続きが気になって。その本貸し出ししてもらえないのよ。それじゃ行ってくるわね。」
リリアは当たり障りない返事をして早々に家を出た。
「・・・いってらっしゃいませ」
シンデレラはそう一言いい、何も言わず姉を送り出した。
「ここね。『ルノアール』」
昨日この店で11時の待ち合わせだったはず。そう思い中に入った。店はアンティーク使用で可愛く上品な店で雰囲気が心地よかった。一つ一つの席がレースカーテンで仕切られ簡単な個室になっている。しかし客は一人もいない。入ってすぐセバスチャンとでも言いたくなる初老の男性に話しかけられる。
「カイン様とお約束なさってるお嬢様ですね?」
疑問形で質問されているはずなのになぜか断定しているかのような感じだ。初老の男はにこにこ笑いかけながらリリアの返答を待つ。
「はい。そうですわ。」
男は一層微笑みを深くした。
「お待ち申しあげておりました。お部屋にご案内いたします」
そういい、歩きだしたためリリアも一緒に歩き出す。店の一番奥の部屋まで案内され男は立ち止まる。
男は部屋をノックした。
「はい」
中から声がした。昨日聞いた一度聞けばなかなか忘れられない声が。壁を隔てても分かってしまう。
「お嬢様をお連れしました」
初老の男が答える。
「どうぞ、入ってもらってください」
そう言い、初老の男はドアを開ける。
ドアの先には昨日と違ってフードを被っていない男が、カイン=フォートが微笑みを浮かべて立っていた。