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女の子の嫉妬っていいよね1

 綾目さんとの同棲生活から数日が経って、今日は12月29日。綾目さんと過ごすようになっても俺は普段と変わらない生活をしていた。

 というのも綾目さんは大晦日と元日を跨いで行う『年越しライブ〜2022〜』を行うのだ。

 そのため、綾目さんは朝から夕方まで練習に明け暮れている。しかも、夕食を食べた後は自主練に励んでいる。自主練が終わればそのまま就寝だ。だから俺は綾目さんとあまり話すことなく数日が経ってしまったのだ。綾目さんと話せるときはスタジオまで護送しているときぐらいだ。その時間も少ししかないので数日経った今でもあまり打ち解けた感じはしない。


「年越しライブの練習が終われば少しは一緒にいられる時間も増えるのかなぁ」


 そんな悩みを吐露していたら連絡が来た。

咲良からだ。


『やっほー瑞季!今暇?』

『暇だけど、どうした?』

『そっか暇かー!そんな暇してる瑞季くんに朗報です!今なら私が遊んであげます!』

『なんで上からなんだ…まぁいいやどこで遊ぶ?』

『いつもの場所で!』

『了解』


 いつもの場所というのはゲーセンのことだ。

 ここは咲良と俺が初めて出会った場所である。


☆〈咲良との出会い〉


 俺が咲良と出会ったのは二ヶ月ほど前の話だ。

 パステルピンクの髪が特徴的な女の子が両替機の前で困っていたので、助けたのだ。しかし、彼女は俺に対して異常なほどの警戒心を露わにしていた。俺はなぜそんなに警戒するんだ?と思いながらも『まぁいいか』と思い目的のゲーム機に向かったのだ。そしたらまたあの子と会ったのだ。彼女はかなり驚いていたように見えた。同時に『こいつか?』といった疑念のような眼差しも俺に向けてきた。俺はそれらを無視してゲームをしようとしたのだがなぜか相手は俺を睨みつけるようにして、


『私と勝負して私が勝ったら付き纏い行為をやめなさい!あんたが勝ったらそうねぇ住所を教えてあげる。これでどう?』

『どうと言われましても…』


と言ってきたのだ。俺は訳もわからずその勝負をすることになった。結果としてはギリギリの勝利。

 あそこでラプラスの必殺技『太陽系星雲説』が当たらなかったら負けていた。この喜ばしい勝利に満足した俺は帰ることにした。帰るため席を立つと、


『え、ちょっ、え?帰るの?住所気にならないの?』

『気になりませんよ。知らない人の住所なんて』


 俺はすぐさまその場かれ立ち去りたかったのでぶっきらぼうにそう返事をし、帰ろうとした。しかし、彼女は大きな声で、


『え、いや、ちょっと!あなた、私のストーカーじゃないの?』


 ストーカー?と思いながらも俺は即座に否定した。


『ストーカーじゃないですよ。僕はただ、目の前にあるゲームで遊ぼうとしただけです。』

『そうだったの…』

『はい』


 はい、ときっぱり言い切ったので帰ろうとしたのだがまたもや呼び止められてしまった。


『あの!私が勘違いで貴方をストーカー扱いしてしまってごめんなさい…ご迷惑をおかけしましたのでこれから謝罪の意味を込めて一緒にご飯食べませんか?ちょうどお昼時ですし…」

『いいですよ謝罪なんて。誤解さえ解けていれば』

『そうだと私の気が済まないんです!だからー』


 プルルと電話が彼女の言葉を遮るように鳴った。

 彼女はすいませんと一礼しながら電話に出た。


『はい、もしもし。今何してるって?近くのゲームセンターで…え!もうそんな時間なんですか!す、すいません!今すぐ向かいます!』


 電話を切った彼女はこちらを向きながら、


『すいません…ちょっと急用があるのを思い出したのでご飯はまた今度でいいですか?』

『大丈夫ですよ。あと、本当に謝罪なんていりませんよ?』

『いえいえ、それだと私の気が済まないので!謝罪させてください!助けてくれたお礼も兼ねて。日を改めてお誘いしますのでyarn交換しませんか?』

『yarnですね。いいですよ』


 俺はyarnを開き彼女にQRコードを見せた。

それを読み込み友達登録できたことを確認して彼女と別れた。〈咲良との出会い終〉


 そんな事を思い出していると目的のゲーセンについた。咲良はどこだと辺りを軽く見渡すとすぐに咲良を見つけることができた。彼女はまた両替機でパニックっていた。


「あー瑞季!やっと来た!ちょっと遅過ぎじゃない?」

「一言目から文句か?そもそも急に呼ばれたんだから仕方ないだろ!これでも急いできたんだからな!」

「ごめんごめん。次からは前もって連絡するようにするよ。でも、今はそれより助けてくれない?」


 彼女は目の前の両替機に視線を変えながらそう言った。俺は溜息を吐きながらも千円札を横にして入れ直した。…なぜ彼女はお札を横にするという発想がないのだろうか。前回助けた時もこれでパニックっていたのだ。人は同じミスを何回もするものだな、と思いながらよくやるアーケードゲーム機に向かった。


 ちなみに今からやるゲームは大人気ライトノベルの「宿命に抗う者たち」だ。「宿命に抗う者たち」は敵である「宿命者」と主人公と共に戦う「スルガー」との戦闘系のラノベだ。この戦闘要素以外にも主人公とスルガーの間に生まれる友情や恋情もこのラノベの面白さの一つだ。


「よし!やったるでぇ!」


 そう言いいながら彼女は座った。俺もすぐ横のアーケードゲーム機のところに座った。


「試合数は十回で一試合ごとに負けた方はジュース奢りだからね!」

「十本かぁ多いな。そんなに要らないぞ」

「何もう勝った気でいるんだよ!余裕ぶっこいてると痛い目にあうよ」

「ふっ、ほざけ」


 試合の形式としては咲良のスルガーと俺のスルガーの一対一のバトルだ。普通のタイマンなので己の実力のみで勝敗が決まる。最初の二戦は圧勝だったが三試合目で咲良のスルガー『風魔』による☆戦略『黄瀬川の夜討ち』で俺のスルガー『罔象女神』がやられてゲームセット。次の試合では罔象女神 の☆夢幻『無限の泉』で風魔を倒した。そして、最後の試合では咲良が『酒呑童子』を使い俺が『ラプラス』を使った。

 最初は酒呑童子の能力により劣勢を強いられていたがラプラスの能力『運命論』で相手の行動を制限し、操作不能状態にしたところでラプラスの☆均差『太陽系星雲説』を食らわせて酒呑童子を倒した。



 ルールに基づき俺が咲良に4本、咲良は俺に6本のジュースを奢ることになった。


「くそ〜!ラプラス強すぎるって!次から使用禁止!」

「バイト代全部使ってでも当てた甲斐があったぜ」

「このロリコンめ!」

「ロリコンじゃねぇよ!俺は低身長が好きなのであってロリじゃない!実際このキャラだって年齢で言えば500歳はゆうに超えているんだぞ?」

「でも、見た目はロリじゃん!」

「そ、そうだけど見た目で引いたわけじゃない!」

「じゃあなんで引いたの?性能?」

「いや、性能じゃないな」

「性能じゃないならやっぱり見た目?」

「凄いロリコンにしたがるじゃん…まぁ見た目もあるが一番の理由は声が聞こえてきたんだよ。

「声?」

「あぁ、助けて!この檻から出して!って声を出して俺に助けを求めてきたんだ」

「普通にヤバイ奴じゃん…」

「なんだと!俺の強い愛があったから聞こえてきた声だぞ!」

「違うよ!ただの幻聴だよ!」

「幻聴?ふざけるな!俺とラプラスによる愛の力で聞こえたんだ!」

「それを幻聴って言うんだよ!!


 俺の愛を理解しない咲良に頭を悩ませていると17時を知らせる時報が鳴った。


「もう17時かぁ…まだまだ遊びたいけど用事あるからもう行くね」

「そうだな。俺も丁度迎えに行かないといけないし、帰るよ」

「迎え?親戚の子供でも預かってるの?」

「うーん、なんて言えばええんだろ?護衛?かな」

「護衛?誰を?」


 アイドルを護衛してるんだって言ったら勘違いするだろうな…なんて言えばいいんだ?彼女?いや、それは少し出過ぎた真似か?いやでも、一応俺は彼氏な訳だし?ちょっとぐらいは問題ないよな?よし!


「彼女…かな?」

「…彼女?」


 その瞬間、咲良が険しい顔をした。


「いつから付き合ってるの?」

「今年のクリスマスからだな」

「どこで告白したの?どっちから告白したの?」

「お、おいどうしたんだよ!そんなのはどうでもいいだろ!」

「どうでもよくない!私にとっては重要なことなの!」

「なんで!?」

「その彼女さんはどこにいるの?私もついてく!」

「いや、お前も用事があるんだろ?やめといた方が…」

「いいから彼女さんはどこなの!」

「箒星スタジオです…」

「箒星スタジオ?私の用事もそこにあるから丁度いいね」

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