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サンタさんからのプレゼント(2)

「「「かんぱーい」」」


 その日の夜、俺たちは親父の送別会+綾目さんの誕生日を兼ねたクリスマスパーティーを開催した。


「まさかあの彼女いない歴=年齢だったお前が彼女とクリスマスを共にするとはな。しかも、あの大人気アイドルの綾目さんと。父さんは嬉しいぞ。」

「彼氏``役''だけどな。」

「そんなこと言って、本当は嬉しいんだろう?」

「まぁ、普通に嬉しいな。」


 当たり前だが可愛い女の子と一緒に過ごせるクリスマスは嬉しい。しかも、相手は大人気アイドルだ。ファンだったらお金を出してでも叶えたいシチュエーションだろう。そんなシチュエーションに俺は彼氏としている。嬉しくないわけないだろう。


「私も瑞季さんと過ごせて嬉しいですよ」

「あ、ありがとうございます。あ!あと、誕生日おめでとうございます」

「ありがとうございます」


 恥ずかしさもあって俺は思い出したかのように彼女の誕生日を祝った。正直な話家族以外の誕生日なんて久しく祝っていなかったのでどのタイミングで言うか迷った。その結果よくわからないタイミングで言ってしまった。失敗を隠すかのように俺は先ほど購入した和菓子を渡すことにした。


「あ、綾目さん。今日が誕生日との事ですので、これを」

「ありがとうございます!後で皆さんで食べましょうね」


 あまりに可愛い笑顔で言うので少しの照れてしまった。またもや、その照れを隠すかのように俺は黙々と食べ続けた。



 夕食を食べ終えた俺は風呂に入ることにした。


 風呂に入った俺は綾目さんにについて考えていた。

何故なのかわからないが俺は綾目さんと既にどこかで知り合ったことがある気がするのだ。これには根拠もないし、白髪の女性と知り合いだったという記憶もない。それなのに何故か俺は懐かしい雰囲気を感じてしまうのだ。きっとこれは俺の勘違いで、相手も俺のことは知らないだろう。それでも過去に会っている気がしてならないのだ。


 なによりも不思議なのはなぜ俺を護衛役にしたのか、だ。俺よりも適任な人は絶対いるし、警察に任せた方がいい事案だ。きっと会社として事を大事にしたくないということなのだろうが、俺に任せると言うのも危険だ。それなのに何故俺なのか。親父はアイドルに興味ないからなどと言っていたが絶対に違う。

この謎を解かない限り俺は綾目さんを命もって守ることは出来ないだろう。無論、この謎が解けたからと言って命を捨てでも守るかはわからない。

 あくまでその謎が俺にとって納得でるきものだったらの話だ。


 そんなことを考えていたら脱衣所から音がした。


「親父かー?今、俺が先に風呂に入ってるぞー」


 返事は無言。そうか、つまり君はそういう親父だったんだね。と思いながら俺は湯船を出た。


「俺もう出るから一人で入ってくれよ」

「あ!待ってください!」


 どうやら親父ではなく綾目さんだったらしい。そうかそうか、綾目さんか。ならば話は変わってくるな。


 ぼーっとしつつあった頭を無理矢理働かせて俺は彼女を待った。少し待った後にガラッと扉を開けた音がしたので音の方に顔を向けるとそこにはタオルで体を隠している綾目さんがいた。恥ずかしいのか顔が少し赤い綾目さん。


「お背中洗いますよ!」


 恥ずかしいのか少し声が震えている。嬉しいお誘いなのだが…


「あーいや、もう俺体洗い終わってるんで大丈夫ですよ。」

「そ、そうですか…」


 気持ちを無下にしてしまったようで申し訳ない。そんなことを考えていると綾目さんがじゃあ!と言わんばかりに、


「では、私の体を洗ってくれませんか?」

「あ、あぁそれなら…ってえ?」


 何この急展開。いや、でもこれ彼氏役越えてるよな?え?彼氏役ってここまでしていいの?ダメだよね?いやでも、綾目さんは恥を忍んでお願いしてる訳だし、男である俺はしっかりその気持ちに応えるべきだよな。


「いいですよ、背中洗いますよ」


 そういうと彼女はパッと表情を明るくし、目の前にある椅子に座った。


 ちなみに、下心はない。お願いされたからやるんだ。

 心臓をバクバクさせながら俺は綾目さんの背後に回った。


「綾目さんいきますよ。」

「は、はい!お願いします!」


 俺は泡立てたボディタオルで背中を洗っていると、

彼女は「ひゃん!」や「んっ…!」などの色っぽい声を出していた。そんな声を出している綾目さんに俺は少し興奮していた。その興奮を紛らわせるために俺は質問をした。


「綾目さんは俺と一緒に過ごすの怖くないんですか?彼氏って言っても所詮役ですし。護衛役としても心もとないでしょう?何より俺は男ですよ?」

「うーん…まぁ、不安がないと言えば嘘になりますが私は瑞季さんを信頼しているので!」


 なぜ俺はここまで信頼されてるんだ?俺は普通の男子高校生だし、高校から部活やってこなかったタイプの陰キャだしで信頼できる要素0だと思うんだが?


「その、すいません瑞季さん…怖いですよね。こんな危ないこと…もし、嫌だったら断って良いですからね!自分の安全が第一なんですから!私は大丈夫ですので…」


 声を震わせながら言う綾目さんを見て俺は思った。

 "強い"と。綾目さんは別に強いわけじゃないだろう。身長は小さく、腕は細い。そんな彼女が襲われたら抵抗できずに加害者に好き勝手されるなんてことは容易に想像がつく。それなのに、人を思いやり自分は大丈夫だといい心配をかけないようにしている。自分が一番怖い思いをしているはずなのに。


「そんなこと言わないでくださいよ。綾目さん」


 彼女はハッとしたように顔を上げた。


「確かに俺は今ストーカーから綾目さんを守るっていう責任重大な任務を嫌々負わさせられています。それこそ今から放棄したいレベルで。でも、こうして人を思いやることが出来る人を俺は見捨てようとは思いません。だって、その人は自分よりも他人という自己犠牲精神の塊のような方なんですよ?それに応えなきゃそいつは人じゃないですよ」


「瑞季さん、その良い話をしている最中で申し訳ないのですが…」


 綾目さんはゴニョゴニョと言いにくそうに言った。


「その、あの、当たってます…」


 何が?と思ったが俺は瞬時に理解した。理解した次の瞬間ぐらいに俺は倒れた。


「え?大丈夫ですか!瑞季さん!意識ありますか?」


 朦朧とする意識の中聞いたのは彼女の心配する声だった。



 目が覚めるとなぜか俺は自分のベッドの上にいた。俺はさっきまで風呂場にいたはずなんだが…なぜ俺はベッドの上に?まぁ、一旦ベッドから降りるか…

困惑しながらも俺はベッドから降りた。

それと同時にガチャっと開く扉。そこに目をやると綾目さんがいた。


「おはようございます瑞季さん!体調の方はもう大丈夫ですか?」

「え?あぁ…おはようございます。体調の方は大丈夫ですよ」


 なぜ、体調?と思いながら『おはようございます』と言われてたので近くにあった時計を見た。針は7時ちょっと過ぎを指していた。7時…え?7時?朝の?今まで何をしてたんだ?確か昨日は親父の送別会兼クリスマスパーティーをして、綾目さんと話して、風呂に入って、そしたら綾目さんが風呂に入ってきて…綾目さんが風呂に!?


「あの…綾目さん。聞きたいことがあるんですけどいいですか?」

「はい?何ですか?」

「あの後、大丈夫でしたか?」

「あの後?一体何の話ですか?」

「あ、いや、その…昨日の風呂の後の話…」


 それ以上言うなといった圧を感じたので俺はそれ以上の追及をやめた。俺が弱いのか彼女が強いのか…一つわかることがあるとすれば、彼女は強くて怖いということだ。

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