サンタさんからのプレゼント1
クリスマス。ある人たちにとっては特別な日。
そんな日でもいつもと同じように遊び瑞季と幼馴染み。そんないつもがこれからもずっと続くと信じて疑わなかった時のこと。
「あのね、みっくん」
「ん?どうしたの?」
「わたし、おひっこしするの」
「おひっこし…とおいところなの?」
「うん…」
公園のブランコに座っていたら幼馴染みは言った。
引っ越し。それが``別れ''を意味していることぐらい幼い瑞季でも理解していた。瑞季と幼馴染みは肩を震わせながら涙を堪えていた。瑞季はこれから会えないことに絶望したり、悲しんだりと色々の感情が入り雑じっていて胸が焦がれていた。
そんな気持ちをブンブンと頭を振って払い落とし、瑞季は幼馴染みに向かって言った。
「○○!また、どこかであおうね!」
驚いた表情を浮かべた幼馴染みだったが笑顔で答える。
「うん!やくそく!また、このひにあおうね!」
目に浮かべた涙を人差し指で拭うと二人は小指を絡めて約束した。
その、願いに近い約束をした彼らは最後に笑顔で
「いってくるね!」
「つぎのくりすますまでにはかえってきてね!」
ー
藤田 瑞季 高校一年生。今日はクリスマス。そして俺はクリスマスが嫌いだ。何てたって日本の多くは無神論者のはずだろ?無論俺も無神論者。無神論者のはずなのになぜクリスマス何て言う日本にはなんの関係もない人の誕生日を祝うんだ?意味がわからない。百歩譲って祝うのはいいだろう。しかしだ、なぜ友人と遊ぶ?なぜ恋人と過ごす?なぜクリスマスはホテルの売り上げがいい?別に俺はクリスマス一緒に遊べる友達や恋人がいないからクリスマスが嫌いなんじゃない。人の誕生日を祝うはずの行事で主役を祝わず恋人とイチャイチャしてることに俺は苛立ちを覚えているんだ。決して俺にそういう相手がいないからという下らない理由でクリスマスを嫌っているわけじゃない。ここだけは勘違いしないでほしい。
…サンタさん俺に俺のことが大好きで家庭的な彼女をください。
そんなことを考えていると下の階にいる親父に名前を呼ばれた。
「瑞季ー!ちょっと降りてこーい!」
「一体朝から何の用だ?」
今は朝の7時だ。こんな早くから呼び出されるとは何事だ?疑問に思いながらも俺はリビングに向かった。すると、そこには親父と知らない女の子がいた。女の子の髪は白く長い髪で毛先の方は赤のグラデーションだった。目の色は赤いガーネット色のように見える。
「おっ、来たな瑞季」
「なんだよ親父こんな朝っぱらから呼んで。何の用だ?」
「お前に彼女を紹介しようと思ってな」
「親父…」
家は長年父子家庭だった。母親は俺を産んですぐに死んでしまったらしい。
だから俺には母親の記憶何て言うものはない。そんな家にもとうとう母親が出来るらしい。母親の方は中学生ぐらいに見える。…ん?親父はロリコンなのか?
「親父…長らく夜の方がご無沙汰だったからって中学生に手を出すのはダメだろ…」
「父さんも相当溜まっててな…って風俗に行ったりしてるわ!あ、いやそんなことはどうでもよくてだな」
親父は恥ずかしいのかコホンと咳払いをして仕切り直す感じに言った。
「この子は俺の彼女じゃなくてお前の彼女だ」
「あーなんだ俺の彼女か…ってえ?俺の彼女?なんで?」
俺が混乱していると親父はことの経緯を説明してくれた。
「俺がアイドル会社の社長だってのは知ってるよな?その俺の運営してるアイドルの『霧島 綾目』ちゃんがストーカー被害に遭っているらしくてな。
しかも犯人は身内…つまり運営側の人間かもしれないんだ。それでお前には犯人が分かるか捕まるまで彼氏役として綾目ちゃんを守って欲しいんだ」
「事情はわかったが何で俺なんだ?自分で言うのもなんだかめちゃくちゃ弱いぞ?俺」
「理由はすごく単純だよ。犯人がわからない以上運営側の人間には護衛役を任せられない。それならいっそアイドルに興味のないお前に任せたら安心だろうって思ったんだよ」
確かに俺はアイドルに興味ない。しかしだ、普通に考えて危ないだろう。なんの武術も心得ていない人間が人を守れるわけがない。よし、断ろう。
そんなことを考えていると綾目さんが俺に声をかけてきた。
「突然すみません…こんな危ないことを請け負ってもらってしまって…」
え?請け負ってもらって?これ、断れない感じ?嫌だよ?死にたくないよ?
「綾目さん、その…あの…」
「はい?どうかしました?」
「あ、いやその…なんでもないです…」
いや、こわ。何、あの目。断ったら殺されるのってぐらい怖いわ。くそ…引き受けるか?いやでもやっぱり怖い…でも目の前のあれも怖いし…
俺が悩んでいると親父が、
「そう言えば二人はまだ自己紹介してないだろう?自己紹介でもしたらどうだ?」
なんてアホなことを言い出した。
これ決定事項なの?いやなんだけど。
まぁ、嫌になったら逃げればいいか。
「そう言えば二人はまだ自己紹介してないだろう?自己紹介でもしたらどうだ?」
「あぁ…と…初めまして?俺は藤田 瑞季…です。高一です。よろしくお願いします…」
隠キャ前開の自己紹介だな…
「私は霧島 綾目です。瑞季さんと同じ高校一年生です。これからは瑞季さんの彼女としてよろしくお願いします。今回はこんな危険な役目を請け負ってもらってありがとうございます」
「護衛役として頑張りますね…って高一なんですか?」
「…?はい?そうですけど…何かおかしいですか?」
「あ、いや中学生ぐらいに見えたもんで…」
クスクスと笑う彼女を見て守りたいと思ったのは永遠の秘密だ。
☆
簡単な自己紹介を終えた後彼女はどこかに行き、俺は自室に戻って彼女について調べていた。
俺の知っている情報と言えば彼女の所属しているアイドルグループ『彗星☆街角』は通称星街と呼ばれていて今もっとも世間を騒がしいているアイドルグループの一つってことと綾目さんは可愛い系アイドルってことぐらいだ。
そんなことを思いながらも俺は彼女について調べた。
調べてわかったことは彼女のアイドル名は『キロン』で身長152cm、誕生日は12月25日…12月25日!?今日じゃないか!しかも、今日は誕生日+クリスマスお祝いライブを行うらしい。
一応何か物を用意しておくべきだろうか?いやしかし、初対面に近い人に渡されても困るか?所詮彼氏役なのだから出過ぎたマネか?でも、忙しいのにわざわざ時間を割いて俺と会ったんだぞ?それなのに何も渡さないってのは失礼か?
結局俺はお近づきの印としてちょっと高めの和菓子を渡す事にした。
☆
19時ピッタに綾目さんが帰ってきたのだが、
「綾目さんその荷物は?」
「これですか?これは服だったりパジャマなどの生活必需品が入ってます」
「…なんで?」
「今日からここにお泊まりするからですよ」
お泊まり?何でだ?俺が彼女の発言に戸惑っていると同時家に帰ってきていた親父が言った。
「さっきも言ったが運営側にストーカーがいたら綾目ちゃんの住所を知っているかもしれないだろう?そんな所に一人でいさせるわけにもいかないだろう?」
確かにストーカーが彼女の住所を知っている人物だったら彼女をそこにいさせるわけにもいかない。かといって彼氏『役』に過ぎない俺と一緒に住むのは危険だろう。
「女性スタッフの家じゃダメなのか?」
「ストーカーが男性とは限らないだろう?」
「だからといって男二人のいる家は綾目さんも怖いだろ。」
「あれ?言ってなかったか?」
何のことだ?と疑問に思っていると親父は言った。
「俺、明日から北海道に行くから」
「…は?」
話を聞くと親父は勢力圏を増やすために北海道にもアイドル事務所を構えようとしていた。北海道の次は青森県、秋田県…と全国47都道府県に自分のアイドル事務所の拠点を作ろうとしていた。当分の間は帰ってこないらしい。ふざけている。
「二人で暮らすのか?え、いやでもどっちにしろヤバくないか?野郎が一人減ったところで脅威なのは変わらないし、お金だってどうするんだ?」
「お金の心配はしなくていい、毎月送るから」
「いや、お金以外にもその…ほら、年頃の男女が同じ家に住むのは色々と危ないんじゃ…」
「なんだ瑞季。綾目ちゃんのことをそういう…」
「いや、見てないけどね?一応ね?綾目さんはどう思ってるのかなーって」
「私は大丈夫ですよ!私としても瑞季さんが近くにいた方が安心ですし」
「綾目ちゃんもそういってんだ。しっかり守れよ」
こうして俺はサンタさんからのプレゼント?で大人気アイドル霧島 綾目と付き合い同棲することになった。