四十八
「いや、まだ質問に答えて貰ってすらいない」
「……」
「私はお前が何者かを聞いた。けど、お前はその質問に答えていない」
もっとも、この質問に限っては例外に当たるわけだけど。
「聞く価値のある話ではあった。そう簡単に聞くことができるような話でもなかった。聞けて良かったと思う」
「……」
「悪魔は嘘吐きの卑怯者ばかりだけど、契約があるなら一応は信用できる。だから、お前が決して邪な目的をもってアリーシャ様のお子様を育てているわけでないということも分かった」
「……」
「だが、お前は私の質問には一切答えていない。お前がアリーシャ様に召喚された悪魔なんてことは初めから分かっていた。ちゃんと答えろ。……お前は一体何者だ?」
「……俺は、あいつに召喚されただけのただの」
「これは私の両親に基づいた忠告だが、契約を結んでいることを忘れるな」
「……」
あぁ、もう誰だよ契約結ぼうとか言った奴。死んじまえ。
「……俺はクロ。魔導士アリーシャに召喚された悪魔でアリーシャにリアとアルを任された。目玉焼きは半熟派でフライドポテトはカリカリ派。家事の中では料理が一番やっていてやりがいを感じる。特にスイーツづくりなんかはリアが頭おかしいんじゃないかってくらい喜ぶから大好きだ。最近はケーキ作りに凝っていて、一度で三度おいしいケーキが作りたいと思って」
「嘘を吐かないようにわざと回りくどい言い方をするということならこちらにも考えがある」
「……」
考えってなんだよ。怖えな。
「……あと、どのくらいで着く?」
「それを答えることは契約内容には含まれていない。……それに、最短距離で案内するかどうかも契約には含まれていないな」
「お前が最短距離で案内するなら包み隠さずお前が知りたいと思っていることの全てを話す」
結んだ直後にやらかしたことには気づいていた。契約を結んだ経験は一度や二度じゃない。それでもこんなくだらないミスをしたのはきっと俺自身かなり気が動転していたのだと思う。
「悪魔は信用しない」
「契約は二重にかけられない」
「…………もし、お前が私を騙したら、私はお前が日頃行くような場所全てにお前に騙されたと言いふらしに行く」
「……分かった」
契約より制裁が重いんだが。
ご近所歩けなくなるじゃねえか。




