表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かつて最凶と恐れられた悪魔の話  作者: 日暮キルハ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/56

四十三

「……悪魔が神様の失敗作なのは、悪魔が神様の言うことを聞かないからよね?」


「そのうえ天使並みの能力を持ってしまっている。だから、悪魔は失敗作なんだ」


 話の方向性が見えない。

 でも、今は黙ってアリーシャの話に付き合うしかない。それしか俺にできることは無い。


「……私は」


「……?」


「……」


「……」


「……私ね」


「うん」


 アリーシャらしくもない歯切れの悪い言い方だった。

 何か良くないことが起きているということは察した。 

 でも、それだけ。それ以上の事はできない。

 何かを変えるだけの力も頭もなかった。


 だから。


「私ね……人間の失敗作らしいの」


 続けたアリーシャの言葉がすぐには理解できなかった。


「……神か。神の奴が……そう言ったのか?」


「……うん。最近、夢に出てくるようになったの」


 失敗作。

 神がそう形容する理由には心当たりがある。

 アリーシャは人間にしては強すぎる。本当に人間なのか疑わしく思ってしまうほどに。

 少なくとも、今の人間は原初魔法なんて代物使えるようには出来ていない。


 それに耐えられるだけの性能で作られていない。

 神の思い通りに、神の思い描いた通りに、ただ神に管理されるだけの存在が人間なのだとすれば、アリーシャの存在は異端でしかない。


 悪魔よりも厄介な存在とも言える。

 ただ、そんなのは神の理屈でしかない。


「……気にするな。神が必ず正しいわけじゃない」


 世界を作ったのは神かもしれないが、世界は神のものではない。

 神の思い通りにならないものは失敗作呼ばわりされるなんて、そんなのは世界の方がどうかしている。


「……うん。私もそう思うわ。そう……思ったわ」


 どういうわけか腹が立った。今更、失敗作呼ばわりなんてされたところで何かを感じるはずもなかったのに。

 酷く神に対しての憎悪が沸いた。


「……アリーシャ?」


「……」


「……おい。アリーシャ……!」


「…………どうかしたのかしら、クロ」


「お前……それ……」


 だから、気付くのが遅れた。

 いや、違う。もっと早くに気付けるタイミングはあったはずだった。

 気付くべきだった。


「なんだか……体がふわふわするわ」


 ボタボタとこぼれ続ける赤色に。机で見えないアリーシャの体がどうなっているのかに。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ