三十五
「どうして貴方がそれを決めるの? おかしいわ」
「おかしいのはお前の頭だ。魂の意味分かるか? 喰われるの意味分かるか?」
分かってはいたけど、頭がおかしい。
「もちろん分かるわ! 食べられたら私死んじゃうわね!! あはは!」
あははじゃない。
「そうだな。だったら、もう少し考えてから」
「大丈夫よ! 私は貴方と契約を結ぶつもりはないもの!」
「あ?」
また、変なこと言い出した。
「今から私と貴方で闘うの! あ、もちろん殺しちゃダメよ! 私は貴方と友達になりたいんだから!」
「……やめとけ」
こいつ……正気か?いや、頭おかしいんだったな。
「あら、どうして?」
「どうしてもこうしてもあるか。たかが人間風情が悪魔に勝てるわけがないだろ。それに、俺は悪魔の中で一番強く一番冷酷だ。これまで俺と殺し合いになって生きて帰った奴は一人もいない」
人間相手ならむしろ殺さない方が難しい。あいつらちょっと突いただけで穴開いたりするからな。そのうえ、穴が一つあいたくらいで簡単に死んじまう。
なるほど。たしかにそういう意味じゃこのガキの持ちかけた勝負は俺にとっては分が悪いか。どちらにせよ殺しちまったらこいつの友達になんてなれないんだから無効試合みたいなもんだけど。
「でも、私が貴方と闘って同じことになるとは限らないわ」
「…………」
たまに生まれてそれほど年月が経っていない悪魔が俺のところに最強の悪魔の二つ名を貰いに来たとか言って突っかかって来るんだけど、もしかしたらそれに似たようなものなのかもしれない。
あいつらなぜか知らないが、やけに全能感に溢れていて俺との戦力差もまともに測れてないからな。軽く小突いてやったらビビり倒して突っかかって来なくなるから気にも留めてなかったけど、このガキのおかしな言動と自信ももしかすればそういうことなのかもしれない。
大概、俺のことを呼び出すやつなんていうのは俺がどういう奴でこれまでにどんなことをやったのかよく知っている。そして、それが人間程度にどうこうできる存在でないということも。
つまりはあれだ。無知って怖いな。




