三十二
「……」
むしろ問題は俺を呼び出した奴にある。
「……おい、人間。お前は俺が誰か分かっていて呼んでいるんだな?」
「……? えぇ、そうよ。そうじゃないと貴方を呼び出したりしないでしょ? 変なことを言う悪魔さんね」
「……」
見た目はどうみてもガキだった。言動もそれっぽい感じだった。
というか悪魔さんってなんだ。
「お前は……悪魔がどういう存在か分かっているのか?」
「……? 知っているわ。神様が作った天使の失敗作よね?」
「……っ。……それをどこで知った?」
「どうしてそんなに難しい顔をしているの? 何か間違っていたかしら?」
間違ってないから問題なんだ。
悪魔の怖さも知らないで、誤った知識で何となく悪魔を呼び出したというのなら、ここでしっかりと悪魔の怖さを教え込んでそんなバカな真似は二度とできないようにしてやろうと思っていた。
興味本位で踏み込んで魂を喰われてしまってはこのガキにとってもたまったものではないだろうから。
けど、このガキどういうわけか悪魔が何かを正しく理解してやがる。
つまり、悪魔の危うさも用途も理解したうえで俺を呼び出しやがったってことになる。そこらで優秀って言われている魔導士なんかよりよっぽど優秀なんじゃないか。
こんなガキが悪魔の力を借りたがるなんて嫌な世界だな。
「……それで、何のために俺を呼んだんだ?」
聞いてはみたが、予想はついている。
俺が求められるのなんて大概は血生臭いことに限られる。
例えば、兄が邪魔で王になれないから殺してくれとか。逆に弟が優秀で兄の立つ瀬がないから殺してくれとか。酷い時は国を滅ぼして欲しいなんてのもあった。
呼ばれたら十中八区誰か死ぬ。
それが俺という悪魔だ。
そんな俺をこんなガキに召喚させるほどに世界は憎しみに溢れているのだというから嘆かわしい。
まぁ、結局はどうでもいいことなのだけど。
俺が気にすべきはこのガキが誰を殺すつもりで何を対価に払うつもりか。ただそれだけだ。
「私、貴方とお友達になろうと思うの!」
「…………あ?」




