二十二
ワイバーンを討伐。その亡骸を本来青龍の死骸があるべき場所に設置する。
そして、貴族様に報告を済ませて報酬を頂いて帰った。
かなりの遠回りはあったし、タダ働きした感じもあるけどとりあえず依頼は無事完了した。
ここまではまぁいいだろう。
「聖騎士様が何の用ですか?」
「単刀直入に聞きます。冒険者ノワールの正体はあなたですね?」
「……」
なぜこうなったのか。
俺は仕事をしただけだ。
ちょっとイレギュラーではあったし、想定外の事も色々と起きたけど、それでもちゃんと問題にならないように仕事をしたはずだ。
にもかかわらず、聖騎士に家に乗り込まれたあげくまるで尋問のような目にあっているのはどういうことか。
俺は悪くない。それはたしかだ。
つまり、逆説的に悪いのは世の中ってことになる。覚えとけよ世の中め。
「……それってあれですよね? なんか……仮面をつけた変な冒険者の」
「……なるほど。しらを切るつもりですか」
「いやぁ……何のことやら」
どうでもいいけど、何のことやらっていう奴って大概何か隠してるよな。
「聖騎士としての経験が言っています。何のことやらなんて言う人は大概何かを隠しているんですよ」
やっぱ、そうなるよね。
「いやいや、そりゃあ俺だって悪魔ですからね。人間には言えないことの一つや二つありますよ」
というか、どうしてこんなことになったんだろうか。
少なくとも俺とノワールが繋がるような手掛かりは残ってなかったと思うんだけど。そんなしょうもないミスするようならこれまでだって誰かにバレてるはずだし。
まぁいいや。違うで押し通せばどうとでもなる。証拠があるわけでもないのだろう。だから、わざわざここまで来ているのだろうし。
「言えないこと? 何かやましいことが?」
「……まぁ、悪魔ですからね。やましいことが無い悪魔というのもどうなんでしょうか」
俺の返答に聖騎士、エリオラは警戒するような視線を向ける。
少なくとも、ここ十年くらいは聖騎士に睨まれるようなことはしていないけど、そちらに注目してくれるならそれはそれで全然いい。存分に疑って調べてほしい。
何も出てくることは無いだろうけど。
「……話を逸らそうとしていませんか?」
「……何のことやら」
いつもはわけ分からんつっかかり方してくる癖にこういう時だけ勘が鋭いのおかしくない?
「何のことやら……?」
あぁもう。余計に疑われるセリフ言っちゃったよ。
「どうして話を逸らすようなことを?」
「……そうだ。ケーキ焼いたので食べていきますか?」
「答えなさい」
「……」
めちゃくちゃ疑ってるよ。というか確信を持ってるよ。
「……どうして俺がその……ノワール? そいつだと思ったんですか?」
このままでは些か分が悪い。そういう時は話を逸らすに限る。
でも、話を逸らすにしてもやりすぎてしまってはうまくいかない。だから、エリオラがここに来てまで聞こうとした内容からは話を逸らさず、そのうえで今のこの悪い状況をリセットできる程度に逸らす。
その結果、こんな感じになった。
「あくまで自分はノワールとは別人だと言い張るつもりですね。いいでしょう。そちらがその気ならこちらにも考えがありますから」
怖いこと言わないでほしい。




