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昔、世界の全てが敵に見えてしまうような自意識過剰な悪魔が居た。
味方は居なくて、周りは自分を利用しようとする者か殺そうとする者ばかりで誰の事も信じることができなかった。
そいつは最強の悪魔と呼ばれていた。
それに見合うだけの力も持ち合わせていた。
でも、他には何も持っていなかった。
だから、それから目を背けるようにただ一つ自分が唯一持っていた誰にも負けない力を振るって己の存在を示していた。
寂しいくせに、悲しいくせに、弱音の一つも満足に吐けないで、ただ力のままに暴れていた。
立ちふさがる者を、敵意を向ける者を、そのことごとくを破壊し尽くした。
そんな悪魔が今の自分を見たら一体どう思うだろうか。
どんな顔をするのだろうか。
腑抜けたと嘲笑うだろうか。
ふざけるなと怒り狂うだろうか。
俺は思う。
きっと、安心して泣いてしまうんじゃないかと。